C川

忙しい日だった。
何とかいろんなことを無事終えて、ひとつの会合をサボって夕刻釣りに行けた。午前中もバス釣りをしていたが、どうも野池のああいう場所では釣りの感触がよろしくない。
昼ごろ、墓の木で水生昆虫の標本を作っていたのだが、そのときの緑の鮮やかなこと。山もすっかり夏の色になっているし。そんなこともあって、10年ぶりに、2本橋の間に入った。
平成7年の大出水から10年が経って、この河原もすっかり安定し、グミだけでなく、ヤナギも繁茂始めた。カワラナデシコが日照を奪われている。ときどき、大型のカゲロウが樹上を舞っている。どうやらそんな季節のようだ。
釣り人の獣道を辿り、木々をかき分けると真っ白な河原。C川はこうでなくちゃ。橋の下は、少し緑色を帯びた水が粘性を帯びて流れている。表面には今まさにライズが始まりそうな期待感を寄せてみる。足下を鮎の大群が走る。小さい場所から流してみるが、反応なし。ライズも始まらない。いつもの里川よりも大きな無数のカレントをいちいち探るがまったく魚の影もない。
やあ、駒ヶ岳がきれいだな。
やあ、残り日が輝いているぞ。
まあ、それでもいいや。
午後7時。彼女との約束の時間になった。
最後に思い切りキャスティングしてみた。10年前届かなかった場所まで容易にフライを預けられる。それなりに上達してるんだな。