もったいない話というか

週間ベースボールで石田雄太が、去年の今頃、ジャイアンツの主催ゲームが地上波の中継から外れたと話題になっていたのに、もう野球は地上波で見るものではなくなっているようなのに大した話題にもなっていないと書いていて、なるほどそうかと思わせた。
ボクの立場は、プロ野球がテレビ向けのコンテンツとして人気が落ちているのは野球そのものの魅力のなさではなく、あくまでテレビコンテンツとして実状に合わなくなっているのが原因だと思っている。世間にあふれてしまった単純盛り上がり志向の人々をボクは以前から「ポリフォニック」と呼んでいるが、そうした傾向が一発芸のような芸人を多数散りばめ、細切れのカットで次々ハイライトシーンを見せてしまうような編集の仕方が、例えば、野球、ゴルフといった長い時間をかけて見せることで解釈に奥行きを与えるようなゲームを冗漫で、冗長で、緩慢なものに見せてしまう。スポーツとは、本質的にスローなものなのだ。カーリングがあれだけ興味深く見れるのなら、なぜ、野球も、ゴルフもこんなことになってしまったのか。原因はイチローにあるように考えている。
メジャーリーグのおもしろさに引かれた人々がプロ野球に魅力を感じなくなったと言われているが、いや、そんなことはない。メジャーリーグをまともに観た人がどれだけいるのか。みんな観ていないのである。見ているのはダイジェストで編集されたイチローのヒットシーンだけである。3安打で3球だけ。そんな紹介のされ方を最も嫌っているのはイチロー本人だが、野球はスタジアムを離れて際だったものだけを単純明快にして見せつける。ゴルフもそうだ。宮里の18ホールを見続ける人がそう多くないことは誰もが知っている。イチロー選手は3安打で打率を上げました。(勝利に貢献しました)なんていう言い方を即刻断罪すべきである。イチローが一発芸人程度に扱われていると言うことなのだから。
昨夜のホークス対ジャイアンツは見所があった。杉内と高橋の投げ合いもプロフェッショナルとは何かを感じさせたし、今日の和田と内海もいい。野球とはこうしたものだ。ダイジェストのイチローを見て育つ子どもたちは、なるほどテレビゲームの野球の方がスリリングに思えてしまうだろう。残念だが、情況を作ったのは、メディア当人で、メディアの特性にフィットしきれないプロ野球そのものが客離れというか、テレビ離れを起こしているのだ。
息子の野球を観戦していたが、ゴリくんの投げるチェンジアップがナックルのように横に揺れながら落ちていく。それだけでもおもしろかった。