うずら家監修そば茶

サントリーのこの冬の重点商品は、そば茶。名店のイメージをうまく生かしたさすがサントリーというべきCMづくりを展開してきたが、そば茶は戸隠。NHKで放送された落合扶樹主演の「楽園のつくりかた」の舞台となった風景が出てくる。
このドラマもよかった。「蒼のシテン」シリーズも悪くはないのだが、それにもまして風景と田村高廣が深い。落合の揺れる演技に染み入ってしまうのだが、その感傷まで戸隠の乾いて凛とした、それでいて肌当たりのよい空気に吸い込まれて、全部の振幅がそこに調和してしまう感触があって、それがドラマの演出かと思ってもみたが、実は戸隠のもつ土地の力だと気づかされるには、不覚にもしばらくかかった。そんな場所を探し出してくるのが、ドラマ作りの最初で、引き寄せられるようにキャストが決まっていくのだと思える。
そば茶となったときに、うずら家に流れるのは、当然至極とも思える。無論、戸隠には名店も多く、サントリーのサイトでも他の店を紹介している。そのあたりもすばらしい。なかでも、客あしらい5割と言い切るうずら家のご亭主が画像に流れたとき、亭主の柔らかなことば、佇まい、中社界隈の日差しまでが見えた気になる。
行きつけの蕎麦屋に「草の子」という店があり、行きつけという割にはそば粉を調達するだけでとんとそばを食べていないのだが、この亭主はうずら屋で修業している。この人はまた、素直で、実直で、ひたむきで、まだまだ迷いを残しながらもそれさえも隠し切れない気取りのないよいそばを食べさせてくれるのだが、うずら家のご亭主と同じ歯切れで話す。彼も引き寄せられた一人なのかなと思う。
来週あたり、うずら家に行ってみるのもいいな。開高健は戸隠に泊まり込んで、寒中のそばを賞味したそうである。香りや風味に勝る新そばよりも、深く土地が育んできたものを再びその小さな実の奥から醸し出してくるこの季節のそばは、オークの樽で、あるいは瓶の奥で長い間眠りについた豊饒な酒のようでもある。
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