長い道

柏原兵三の自伝的小説。隣町の出身で、映画「少年時代」の原作となった藤子不二雄Aの「少年時代」の原作、つまり、映画からすると原案としてある本である。
隣町の人たちはしばしば「少年時代」の舞台になったと話すが、映画「少年時代」は、藤子の「少年時代」を下敷きにしているのでロケが行われたことはともかく、舞台はその町ではない。そのことを話すなら、映画「少年時代」の原案となった柏原兵三の小説「長い道」の舞台と言わなければならないのだが、何だかちょっと不思議な感じがしていた。昨年11月に北陸中日新聞でこの小説の現場を訪ねて、土地にまつろう食を味わう記事があった。記者はちゃんとここらの事情をふまえていて、単純に「少年時代」とのリンクを避け、しっかりと「長い道」を踏まえていたのはさすがと思わせた。
なんでそういうことになっているのかなと思うと、「長い道」が絶版になっているため、実はほとんど読んだことのある人がいないってのが本当のところだろう。ボクも中古でやっとのことで手に入れた。
読んでみると、いろいろ考えさせられる。
僕という人称で描かれているため、僕である書き手に心を寄せてみると、その時代が何に覆われていたのか、そして、そうしたものが払拭された後にも、この土地を覆っているものと対照して考えてみると、そこからに田舎が蒙ってしまったトラウマを読めるように思うのだ。
案外すいすい読んでいるので、来週には総括できようか。