たそがれ清兵衛

テレビで鑑賞。名作である。まとまり感や映像の美しさでは、隠し剣の方が好きだが、この作品は、何といっても田中泯が出ている。このごろでは、NHKの「ハゲタカ」にも出ていて異様なオーラを吐きまくっていた。「ハゲタカ」の主人公は、大駱駝艦麿赤児の倅だったので、また、ひとしおだった。
田中泯は上役の不始末の責任を取らせられる形で詰め腹を強要され、それに抗って清兵衛と立ち回る下級武士だが、台詞回しの凄さもあるが、何よりその体の動きである。切られてばたーというものではなく、執着しながら、未練しながら、どこまでも生き続け、みっともなくも立ち上がろうとする人の姿を繊細に表現していた。こういうのを役者というのだなと、SMAPな人々にでも教えて差し上げたい。

原作ってわけでもなく、藤沢作品のさまざまな場面から構成されている。プロットが表題作というくらいか。
隠し剣の、あの松たか子の雪のシーンと、病んだ娘を強引に連れ出す場面は、先週読んだ短編集にあった。それも素晴らしい作品であったが、あの映像はまた忘れられない。松たか子ってあれだけでもいいやと思わせた。彼女は若い頃の作品で、先輩に憧れて同じ町の学校に進学し、新しい町でアルバイトしている先輩に出会うってだけの短い映画があって、それが傑作だと思っていたが、いや、隠し剣になった。あんまり意味はわからんが。