辺野古移設

すでにニュースとしては普天間移設ではなく、辺野古移設となった感がある。社民党党首が更迭され、いよいよ政局に発展してきた。社民党切りは選挙での成算、あるいは、妥当な負けぶりを読み込んでのことだろう。
この問題で今朝の朝日新聞に、信じがたいコメントが掲載されていた。鳩山首相の迷走を小馬鹿にしている間に、大切なものを見過ごしてしまうことも考えられる。思い出してみよう。安部、福田内閣のていたらくに、あの麻生総理でさえ満場の拍手をもって迎えられたわけだ。何かを見過ごしてしまう体質がこの社会にも、言論にもあるということだ。
鳩山首相全国知事会議で、沖縄の負担軽減を訴え、各知事にも呼びかけた。いくつかの反応があったが、橋下知事のみんなが当事者感覚を持つ機会にすべきとの趣旨には全く賛同できる。この問題は普天間の異常な状態を解消することが事実命題としてありながら、本来はこの国の安全保障をどのように確保していくのかという価値命題にある。どこに移るかの議論ばかりで、核心を先送りするわけにはいかないし、反対の叫び声で議論する土俵さえ消してしまうのは危険である。
ある日本海側の県知事が知事会後の取材で漏らしたコメントだそうだが、この取るに足りないコメントをわざわざ掲載したのは、この知事がかの未曾有の大震災の際に政府官僚として関連部署のトップの位置にいた人だからだろう。その当事者意識の呆れるほどの低さには、さすがに記者も驚いたはずだ。
全国で負担を分散したいという鳩山首相の考えに主にこんな答え方をしているようだ。地政的なことはどうにも変えようがないのでどこにでも負担できるものではない。○○県にかかわることはほとんどないといった内容の発言。コメントを拾っただけなので、こちらの要約も正確ではないし、そもそも取材通りのコメントとも思えないが、少なくとも彼の人が当事者意識をもっていないことだけははっきりとわかる。
ところが、よく考えてみるといい。日本海側では拉致問題が現実としてリアルに今も継続中で、不審船や不審な飛行体の接近は報道されないだけで、ないわけではない。現実に制御可能なミサイルの射程に十分入っており、国内での工作活動の痕跡も確実に残っている。半島有事の際には、全く日本の正面になってしまうことを、この人は感じていない。しかし、そんなことがあるわけはないので、ここに普天間問題、あるいは、辺野古問題の性質があると思う。
この知事の発言に見られるように、この問題は単純に普天間辺野古の問題、もう少し敷衍しても、せいぜい県内・県外、国内・国外への「移設」問題であって、安全保障の議論として当事者を意識させているわけではないということだ。
もっとも、この人をリトマス紙にするわけにはいかない気もする。別の問題でも隣県の知事と見当外れの議論を繰り返している。しかし、これが一般的な態度だろうとも思える。
議論の方も、声の大きいモンの勝ちになっている。だから、ディベートのような勝ち負けを競うような議論のあり方を学校でなんか教えちゃいけないっていうのに。