立山水質調査や自然観察

立山の自然観察を中心に、雪解け水の観測調査をする子どもたちの活動のお手伝い。雄山の山頂を目指さない立山も奥深くいいもの。
美女平で巨木を眺め、昭和天皇称名滝をご覧になったという大観台、そして、弥陀ヶ原。自然の視点から見ると、この立山の地形の独特の形状が見えてくる。
立山火山火砕流台地の末端部の美女平の巨木はタテヤマスギ。実は、木に直接ふれられるのは案外少なく、美女平駅の前にある通称「出迎え杉」を含めてそう多くはない。子どもたちは誰に導かれるわけでも、促されるわけでもなく、巨木にゆっくりと近寄り、樹皮にふれている。
大観台では、その火砕流台地をV字に切り込む水の力を見る。激しく台地を切り裂く水の力は、この土地に降る雪の力でもある。
弥陀ヶ原の高層湿原は、吹き渡る風の快さを教えてくれる。しかし、湿原も乾燥しつつあるようで、ガキ田が埋まり、ササが茂り始めて、光景が激しく変化しつつある。

室堂に入ると大勢の人でごった返す。山岳ガイドの佐伯高男さんを始め、ナチュラリストや引率登山の人など何人か知っている人にも会う。
学校登山できていたI先生と少し話すと、多くの学校が1泊の行程の初日に雄山登山をするという。天気が悪い場合に、2日目に登はんできるような日程の組み方だそうだが、せっかく1泊で行っているのに日帰りと変わらないような行程にして、さらに、雄山登頂を主目的にするもので、2日目の室堂や弥陀ヶ原の周遊などは完全にモチベーションを欠いているとのこと。登山を延期するような悪天候って何だろうと聞いてみたら、雨だとのこと。雨具を持たせていない学校さえあるという。山で降るのは当たり前。行動できる天候かどうかの見極めであって、山に臨む覚悟がさっぱり見えない。運良く無事故のいい例だろう。しかし、今年は猛暑でいろいろ救助活動も忙しいそうだ。
この間、ボクも立山登山の引率をしたが、美女平も入れておけば良かったと後悔。次にお話があれば、そのように進言しよう。
水質調査は、雪解け水のPHが相当に酸性度が高いことが判明。どうしてなのかはよくわからない。玉殿の湧水は、PH7の完全な中性だったので、あれは雪解け水ではないのかもしれない。
帰途、激しい雨。一日の雲の変化がわかって、それはそれでおもしろかった。黒い雲はその厚さ故に日光が下まで届かず影で黒く見えると教えられた。なるほど、そういうことか。
ちょっと不思議だったのは、美女平の美女杉の解説。自分が知っていたのとは少し違う物語で説明してあった。
それがこういうもの。

立山を開山したとされる佐伯有頼には許婚者の美しい姫がいました。
ある日、有頼に逢いたい一心で立山に登ってきた姫は、
開拓するまでは帰れないと追い返され、この地にあった一本の杉に祈ったそうです。
そして後に姫の願いは成就して二人はかたく結ばれたという。

今まで知っていたのは、こういうもの。

かつて立山は女人禁制であった。掟を破って立山に向かったお姫様がここで動けなくなり、杉の木に変わった、あるいは若狭の止宇呂[とうろ]という尼の侍女が変身してしまったとも。

うーん、どうして伝説を書き換えたのだろう。立山博物館の映像展示では、美女が変身したことになっていた。そういうおっかない話なので代えたのだとすると、それはむしろ霊山立山の文化を蹂躙しているな。じゃあ、かむろ杉とか、鏡石なんかはどう説明するのだろう。
地獄から許された人たちが水とともに流れ出すという御赦免滝も、ソーメン滝になっているしね。本来の意味を違えていくのは、やがて、文化のすり替えにつながる。今後、注意して見ていこう。