姫川温泉 白馬荘

彼女がかぜで寝込んでいてようやく起きられるようになったものだから、どこかの温泉に行こうということになった。どこがいいだろうと選んだのが、姫川温泉。いつもは国富に行っているのだが、たまに違うところへと姫川の対岸にある白馬荘に行った。川を越えると右岸は小谷村。信州である。泉質も異なる。こちらは硫黄臭が強い。
温泉のたたずまいは、ずいぶんと古くさい。それが味わいを増すのも変だが、ひとつひとつが十分に足りていて、そこに時間の流れが見て取れるのだから、申し分ない。ちょっと凝った味わいのAVでも撮影すれば似合いそうである。浴室の目の前を大糸線が横切るのもいい。

こういう手洗い場で、寒さに身を震わせながら顔を洗う朝もいいだろうなあ。

何も新しいものばかりが美しいとも思えないのが、こういう風景に心を動かされるからだ。

硫黄の成分が皮膜を激しく侵している。
水さえも硫黄臭が漂うのだから半端じゃない。お湯は、少しきりりとした感じで、国富のしっとり感とはまた別の味わい。不思議なことにいつまでも入り続けられるような感じがする。ほてりがないのに、あたたまる。いいお湯なのだろう。
男子の更衣室には、建物の基礎になっている石灰岩が張り出している。
自慢の露天風呂も味わいたかったが、屋根雪を下ろしていて通路が雪で閉ざされてしまっていた。
湯治ということばがしっくりとくる湯宿である。また、そうらしい人影もちらほら見かけた。