斑尾


野尻湖の朝、耕耘機の音がすると思ったら、バスボートだった。スモールの釣り場として有名なのは知っていたが、こんなにもたくさんの人がやっているというのは案外だった。なかなか本格的だが、あまりロッドがしならない。移動が激しいところを見るとかなり渋いのか。一応、ロッドは積んであるが、素人には難しそうだ。
じゃあ、山歩きにしよう。
遊歩道を降りる。うちの方なら1ヶ月前という気配。新緑もいいが、野草もいい。春の野草は必死で、それがいたいけない。野尻湖畔に降りる道もまだ整備されていないと宿の人に聞いた。倒木やらトカゲやら蛇やら、それはそれでありのままで気持ちいい。水際まで来ると、バスボートの様子がよく見える。10分ばかり見ていたが、かかる気配がないので、どんなもんだろうと思った瞬間に目の前でライズ。なかなかのスプラッシュ。ちゃんといるんだな。
宿を発って、斑尾に向かう。タングラムのリフトを使って1150mの展望台に上がる。すぐですよ、なんて言われたのだが、けっこうな傾斜で残雪も多い。ゆっくりと上ると、なるほど絶景。北信五岳のうち、妙高、黒姫、戸隠、飯綱の4つが見える。足下の斑尾のピークが見えないだけだ。野尻湖はとても小さく見える。
ゆっくり下ろうとするが傾斜がきつく、膝が悲鳴を上げだした。その分、花を見ながら歩く。ゼンマイ花の群生。コゴミがまだまだ色鮮やか。

少し遅いお昼を黒姫の蕎麦屋で済ませようと、山を下る。野尻湖畔で釣り人がたくさんいるのを見かけてちょっと覗くと、すぐにヒット。大きなスモールがかかり、周りの人が集まってきた。ということは、けっこう渋いということか。えさ釣りでぶっ込んでいたそうだ。
黒姫のおがわという店に入る。そろそろかなと思っていたら、案の定、女亭主が出てきて暖簾をしまおうとしている。ちょっと促すといいよとの返事。ざると天ぷらの盛り合わせをお願いする。
出てきた天ぷらがすごい。そのへんの野草山菜をたっぷりと揚げてある。

朝鮮人参まで入っている様子。ムカゴまで入っていたのには驚いた。そばの方は、風味はいい。もう少ししっかりしていてもいいかなという具合だが、この土地の、この家のそばなら、それらしく受け止められる。おいしかった。
天ぷらはけっこう腹に響いたらしく、簡単な夕食になった。
風と野の味わいを堪能した日になった。
9時には眠ってしまう。