小遠見山

彼女とどこかの山に行こうということに珍しく、なった。すると天気は全く視界のない、しかも雨。こんなものだが、山の雨は一興。そう捨てたものではないし、山の天気は受け入れるより他にない。
五竜のテレキャビンでアルプス平へ。そこから小雨。アルプス平には高山植物園ができている。2003年から整備が進み、部分的に開放してたらしいが、昨年から本格的にオープンした模様。今年は、つい一昨日開いたばかりで、テレキャビンも、今週末から本格稼働ということらしい。
地蔵平の小屋で雨具を着込んで出発。11時。2時間もあれば大丈夫だろうと踏んでいる。道は良く整備され、残雪があるも不安なし。雨具の分、少し蒸し暑く息が切れる。
尾根筋の絶好のルートのはずだが、視界はほぼ100m。足下には、カタクリ、イワカガミが乱舞する。こんなに群生するものとは知らなかった。歩道脇のマリーゴールドのように咲いている。
小遠見山までは約90分。360度、霧。何も見えない。さぞかし、すごい景観の場所だろうと感じられる。いくつかの地蔵がある。遭難者の鎮魂か。おそらく、ここからその場所を見渡せるのだろう。

下りは、アルプス平の遊歩道に回り込む。これが思いの外、絶景。まるで、朝日岳の裏側を歩いているような感触。多くの高山植物に出会った。高山植物園の方に入り込むといよいよ興奮。コマクサの花壇なのだが、実に良くできている。植えられているには違いないが、白馬岳などに咲いているように咲いているのだ。山をよく知る人たちが整備しているのだろう。霧の中でへばり付くように花を咲かせるコマクサを見ていると、中学生のときに父と訪ねた雪倉岳のコマクサの群生を思い出した。それと見まごうばかりなのだ。すぐそこに父が立っているような気さえして涙が出てきた。彼女に気取られぬように別の花を探す。
この手のものはいくつか見てきたが、時期と気候があったのだろう。これほどに高山を感じさせるものは初めてだった。雨は憑いていた。
アルプス360で水出しコーヒーを飲み、下山。たぶん、最後のお客さん。晴れるとずいぶんたくさんの人になるだろうし、多くの人に見てもらいたい場所。
下山後は十郎の湯へ。スキーシーズンと違って、人も少なく、落ち着いている。時間も夕方に近づいたので、ハリスさんの店で何か食べることに決め、のんびり過ごす。店を通りかかると開店は6時。ニレ池の周りで写真を撮って過ごす。



ハリスさんの店でお好み焼きと明太子サラダうどんを頼む。両方とも絶品。お好み焼きは本当においしい。ふわふわではなく、しっかりとした味が全部に染みこんでがっちりとした味。ビールを飲むんだったが、帰宅しなくてはならない。今度はやっぱりどこかに泊まろう。スキーの話をずいぶんさせてもらう。おもしろい。白馬はスキーに関しては突き抜けている。
店を出ると、まだ日が少し残っていて、稜線が青黒く浮かび上がっていた。気持ちの良い風が谷を包んでいる。