どうも初めてだな

最近評判のお蕎麦屋さん。蕎麦屋で一杯というのを楽しめるお店で、東京の二八が売り物。
冬用のメニューもあるし、大好きな鴨汁も、辛味大根もあって、これは困ったと迷っていた。
つけは少々甘め。薬味は、白葱と山葵。竹笊に盛られたそばは、全体に広げられ、なるほど、東京のそばである。
蕎麦屋をどうこう言おうとしたとき、どうしても必要になるのは、その蕎麦屋がどんな蕎麦屋で、どういう出自にものを出そうとしているかが大切になる。たっぷりと腹を膨らませるそばもあれば、たぐって終いにするそばもある。あるいは、日常食としてまるでお米のように毎日の食卓に載せられていたそばもあるだろうし、ハレの場所でしか供されなかったそばもある。蕎麦屋が何を基本にしているのかをよく知っておかないと、裏切られたような気になる。それは客の勝手で、客の側でもしっかりと踏まえてはいないと、亭主の志や意趣を損ねてしまう。
角が立った細打ちのいい気色だ。これは期待できるぞと思ったが、一口目でだめ。疲れて体調でも悪いのか、全く、喉を通らない。噛まなければ食べられないそばってのはそうしたものかと思うほど、きつい。香りがなく、この時期にしっかりと出てくる芳醇な甘みも感じられず、ざる1枚に四苦八苦した。粉がよくないのか、横で食べている彼女はおいしいと言っているので、きっと体調のせいだろう。
調度がちゃんと合っているのにうまくいかないというのは、つらい。掻き揚げをちょっとつまむ。うまい天ぷらだ。天ぷら屋と遜色ないが、蕎麦屋の天ぷらではない。
ボクの体調、蕎麦屋の誂え、そばの状態など、うまく合わないとこういうこともあるんだな。