第3極という方舟

プロレスの黎明を支え、そのまま、隆興した日本プロレス力道山という柱亡き後分裂し崩壊。後を受けた全日本プロレス新日本プロレスの二大勢力がほぼ絡み合うことなく、いよいよプロレスの可能性を切り開き、すっかり、文化としてのプロレスを定着させる。
しかし、レスラーは年を取る。年を取ればアスリートとしての肉体を露出するにも苦労する。レスラーが衰えるのは物理的な常識で、抗いようのない時間の流れをファンも共有する。しかし、組織はそうはいかない。新陳代謝で新しい血流を得る必要もある。
大極もまた、第3極を得ようといくつもの動きを生む。あるときは、領袖が自らの衣を脱ぎ捨てて第3極を作り、それを大きな柱にしてしまおうとする動きもあった。ある時は、分裂した党派が振り子のように行き来したりもした。だが、やがて、二大潮流に飲み込まれることを繰り返していた。
ジャイアント馬場の夭折で折れた柱が動きを生んだ。実は、大きな二つの塊から、第3極が生まれた。緑の塊を吐き出して、以後、混沌が続く。
この国の指導者が乾坤一擲で放ったのは、風貌に似合わぬ必殺の延髄斬りだったのか、引っこ抜きジャーマンだったのか、振り返りざまのラリアットだったのか。いずれ、ピンフォールは奪えまい。華麗ではないが、死に体からのカウンターの掌打の如く、相手がうろたえている間に間合いを図る時間を稼いだ。そんなところだろう。それも、金的に放つほどの品を捨てなかった。やがて、勝敗は付くが、そこからが始まりだ。
この陸軍参謀閣下のような政治家は、やがて、方舟で漕ぎ出すと、ボクは見ている。その時、誰が乗り合わせるのか。案外、国際軍団ではないのかとも思っている。