氷見へ

氷見は富山湾の向こう側。実は、白馬へいくよりも遠い。スキー場のオープンの便りを知りながら、雨の中ではちょっと臆してしまい、氷見へかぼす汁でも食べに行くことにした。
氷見港の横の海鮮館に行くと閉館した模様。ここもこういうことになったかと思ったら、すぐ北側に番屋街という新しい施設ができていた。これがなかなかいろいろうまそうなものが並んでいる。
単純に表現するとフィッシャーマンズワーフなのだが、氷見は山間地も多く、海山のものがずいぶんと並んでいる。ブリが有名だが、そもそも地元消費するよりは大消費地へ持っていかれるので、コーヒー産地のコーヒーのようなもの。最近は、ブリの1年魚のフクラギの旨さも知られるようになり、堂々と店頭に飾られるようになった。氷見は干物もうまい。漬物もいい。米も中山間地域で作付けされた美味い米なのだ。

さっそく買ったのがメザシ。イワシ丸干しだ。これは本当にうまい。一列で250円。500円でも買いたい。

鮮魚はこういう感じ。評判のヤガラが右端に写っている。これはうちでは食べないなあ。どんなものだろう。他にも観音イカという数十kgもあるイカが10000円で売られていた。
ブリステーキというのがあって、彼女と食べる分買ってきた。
ブリと言いながら、チュウモン、いわゆるガンドの大きさだろう。脂ののり方が調子いいので、きっとステーキならブリよりうまそうだ。こういう新しい商品がいろいろあって、なかなか楽しい。

ハタハタのオイル漬けというのもあって、オイルサーディンのハタハタ版なのだが、旨そうだなあと眺めていると近所にワイナリーがあるという。ランチも食べられるというので、雨で歩き回ることもできず、さっそく訪ねることにした。
古いカーナビでは出てこないので、適当に走り出す。アイヤマガーデンの先の林道をずっと行けとパンフレットには書かれている。なかなかの山道。落ち葉が積もってスリップしそうだ。数分後、いきなり視界が開け、海が見渡せる場所に出ると、すっきりした建物が見えた。これだな。

ランチが食べられるかどうかを確認すると大丈夫だという。ワインは飲めないがおいしい氷見の食材を味わえそうだ。

セイズファームと呼べばいいのか。
天気がいい日にはすこぶる付きだろう。

耕作放棄地を使って数年前から葡萄を植えて、ワインを作り始め、カフェやショップを作り、今も新しい小屋や農地を増やしているという。

店内は撮影禁止。
kakiの家具やどこかの廃校からもらってきた棚などが並ぶ店内は居心地の良い場所。彼女は、ポークにりんごソースを添えた山のランチ。僕は、魚の海のランチ。前菜は、黒オリーブやサケのムースなどの彩りと香りの高いプレート。ポークも香ばしく甘く、魚は焦がしバターの風味が氷見の魚によく似合っていた。ナイフとフォーク、細身の上品な箸が付いていて、食べ方の所作までゆったりと優しく過ごせる。
漁師鍋を食べる予定がすっかり別の流れになったものの大変満足。近くを通りかかったら必ず立ち寄りたいものだ。
洋風だが、ランチにはごはんと味噌汁が付いてくる。氷見のコメは美味い。味噌汁のナメコもうまかった。同様のワイナリーと比べても、価格も驚くほど安い。隣のテーブルの刺身ランチの量を見て驚いた。もともと魚屋さんというだけあって、お安い御用なのだろう。次はあれか。二人でひとつでいいかな。
後にするのがもったいない場所というのが時々ある。
ゆったりとした後は、岩井戸温泉に向かう。いや、そのつもりだったが、地図にない。ホテルマイアミという名前だったはずだが。氷見は温泉がずいぶんあるんだが、30年くらい前に岩井戸温泉が開かれたのがことの発端だ。行くだけ行ってみようと記憶を頼りに進むと、なるほど、名前を変えたわけだ。うみあかりというそうだ。さすがに、マイアミはフロリダの地名だものな。改名は賛成だな
このお風呂は岩風呂に屋根をかけたような素朴な造り。お湯はかけ流しで塩分の強いよく温まるもの。無色で土臭とあるが、全体に褐色を帯びている。酸化作用のせいか。じっくりと体の中から温まる感じがする名湯。氷見漁港の近くにも総湯ができたそうだが、こういうところが僕には向いている。
ただ、地元の方がけっこう多いのだろうと思うが、立ってシャワーしたり、掛け湯もせずにいきなりお湯に浸かったり、人を押しのけて湯口に入り込んだり、自分の家のお風呂のようにふるまう年配がいらっしゃる。先々週の妙高温泉では地元の方のふるまいに感心しきりだったのに、先週の福光と、今回の氷見と、少し残念な印象が残った。お湯の良さが全くの救い。
基本、かけ流しよりも天然湧出が好きな僕だが、夢のお告げで掘ってみたと、そんな曰く付きの温泉もまた好きなのだ。
当初の目論見とは違っていたけれども、なかなか楽しめた。
これから山の遊びに変わっていくだけに、今日の遊びは貴重だったな。左手の痺れがまだまだ治まらない。