戸倉山@糸魚川市、小谷村

グリーンシーズン最初の山は、戸倉山。糸魚川根知谷から塩の道で信州に越える峠からほんの少しでアクセスできる山。低いが、雨飾山に連なる位置に突き出していて、独立峰の趣がある。気象条件に恵まれれば、白馬岳から栂海新道、黒姫山、明星山、雨飾山根知駒ヶ岳、焼山などに加えて、能登半島佐渡島まで見渡せる。山のすぐ足元にはシーサイドバレースキー場があり、スキー場の第5、第6ゲレンデに突き上げているあの山だと言えば、地元の人にはわかりやすい。
数年来、塩の道を歩く機会を作るようにしている。今年は、ぜひ、大網峠を越えて平岩まで入りたいと思っている。そういう気持ちもあって、この山を皮切りにした。
麓の白池から塩の道にはいる。ここは、白池と書き、シロイケと発音する。糸魚川市には、蓮華温泉に至る途上に同じ名前の池があり、そちらはシライケと発音する。公園になっていて、今日は何かメンテナンスの日なのか、イベントでもあるのかたくさんの人で賑わっている。

白池まではアスファルトを歩く。山歩きのできる遊歩道もあるのだが、アプローチは手早くといつもこの方法を使う。見上げる山が、戸倉山。新緑が光るものの、まだ、沢筋に雪がありそうだ。
この地域は、かつて信越国境が定まららなかった係争地であった。一応、白池までは越後、そこから坂を登って戸倉山の稜線にかかると国境となる。
このすぐ近くに、戸土という集落があり、山岳地以外の信州の集落で唯一海が見えるという信州最北の場所だ。とどのつまり、からきているとも言われるが、戸倉と戸土なので、何かそんな由来なのだろう。
池は、青白く澄んでいる。雪解け水の関係なのだろう。不思議な色合いだ。流れ出す川にも何か白いものが沈殿しているので、鉱物の可能性もある。


雨飾山を望むには絶好の場所のひとつだ。車椅子が入れるように整備されているので、地元の役所に依頼するときっと便宜を図ってもらえるはずだ。
ここで塩の道に合流。4時間くらいで、信州の集落に抜けられるらしい。牛が引かれた場所なので、道は比較的広く、緩やかな傾斜が続く。時々、残雪に出会う。もう上から人が降りてくる。どこかの山岳会の方らしい。コゴミを必死で取っている人があって、きっと早めに下ってみんなで食事でもするのだろう。
角間池までくると、信州になる。看板にも、小谷村の表示。県境を示すように、ここからブナ林が広がる。視界を埋め尽くす目映い緑に圧倒される。十日町の美人林もいいけれど、これもすごい。
もっと宣伝すればいいのにと思うものの、アプローチは糸魚川、場所は小谷村というあたりが面倒なのかもしれない。

塩の道は角間池を回り込んですぐ大網峠に至る。

ここから右に折れて、稜線を辿る。40分くらいか。
ブナの輝きが愛おしく少し物を食べる。



戸倉山は花が盛りだった。イワカガミの群生が目に付く。空は少し曇りだし、冷たい風が吹いてきた。山頂からは、さすがに能登半島は霞んでいたものの、多くの山が見渡せた。白馬乗鞍から雪倉、朝日岳がよく見え、亡き人を思い祈る。ちょうどその辺りは、手前の山に隠れて見えない。

山頂のイワカガミは少し赤味が強い。
途中の雪渓には、こんな気もあった。ここは雪深い。捻じ曲げられてもたくましく生きる姿に心を寄せる。
下山時には、イベント登山らしい人々とすれ違う。小さい子どもあり、自分が小さい頃、歩こう会などのハイキングに参加したことを思い出す。それが、今につながっているのだろう。体験とは大切なものだ。
白池からはブナ林の遊歩道を歩く。少し回り道になるが、春の表情がたくさん見つかる。
下山後は、お決まりの塩の道温泉へ。休憩室でゆっくりと痛みが少し出た左膝を労わる。ここの温泉は、実によく温まる。肌がつるつるして気持ちがいい。循環しているが湯口からは源泉が流れているのでその辺りがお勧めだ。循環で塩素臭があるのだと思っていたが、実は、塩素分も少し高い。なるほど、そういうこともあるのだ。つんと嫌な感じがしないのはそのせいか。