白馬で雨に降られる

天気予報だと夕方から降り出しってことで、まあ、何とかなると白馬に出かける。週末ごとの雨で川は釣りにならず、ニレ池で少し遊ぼうかという目論見。最近は、彼女もこの間自分だけで釣ったことが刺激になって、やってみたいなどと言うようになったので、2本刺しで出発。ただし、このところ山にも登っていないため、山並みが見えるようなら、今日動いているという黒菱リフトで八方池というオプションも視野にいれて。
白馬に着くと、幸い雨は落ちていない。空も高いので、まだ大丈夫か。雲はちょうど第1ケルン付近にかかっていて、それでもちょっと見晴らしもないので釣りの選択。
ニレ池にはそこそこの人。明日がダービーなのでその準備も始まる。濁りはほぼなくなり(といっても、ニレ池のオールクリアは本当に底が見えるので、まだまだ濁りがある)、魚の活性はいい。ルアーは少々シビアな感じだが、桟橋のただひとりのフライマンは30mキャストで楽しそうに魚をかけている。どうにでもなるコンディション。知り合いに借りているティムコのグラスマスターを試すにはよかろう。35センチまで難なく取れるというふれこみってことは、アベレージ40センチのニレ池では面倒になりかねないのでねらってかけたいと思っている。ここまで見えれば大丈夫だろう。いつものグリフィスナットを浮かせたり、伏せたりしながらアントまでをカバーする。
時間がお昼に近いので、先日のサマージャンプで葛西選手と握手していて食べられなかったそばを先にすることにした。この界隈でまた行き残している「りき」にした。
りきはいつも混んでいるので、この時間ならと考えたのは正解。実にゆっくりとできた。細打ちの二八。それもかなり細い。優しいそばでなかなかうまい。僕は煮掛けをいただいた。ごま油で炒めた野菜入りの温かいつけ汁に蒸籠。いや、実にうまい。好みの味なのだ。この濃さはたまらない。そばの優しさともよく合う。でも、塩辛いといえば塩辛い。ここの寒さにはこの強さがいいのだろう。実際、大寒の戸隠のそばは、濃いつけ汁とそばがたまらぬ身に合った旨さを発揮していた。不覚にも、涙が出たくらいだ。また、この店もそうした頃にくればいい。
それにしても、そばは打ち手の人となりがよく現れる。これは、人柄を知っている後輩が蕎麦屋を開いたことでいよいよよくわかった。草の子という蕎麦屋なのだが、戸隠の名店で修行した彼がこしらえるそばは、うずらやの系統ではあるが、彼の素直で朗らかな性格がよく反映したそばで、季節でいろいろ移り変わるけれど、そのテイストは一貫している。きっと、こちらのご亭主も、おごらず、媚びず、手を抜かずそばに向き合っているらしい。
そばの量の表示が変わっている。普通のが150gで八方、杓子、白馬鑓、五竜、白馬と量が増えていく。大盛とは少し違う仕組みだ。これを数人で食べる人もあるようで、それは遠慮していただきたいとある。一人分の盛りなのだ。このそばなら3枚はいけそうなので、おもしろい仕組みだ。
店を出ると雨が落ち始めた。ニレ池で待つが、雨は強くなるばかり。グラスマスターに糸を通すと竿の素姓が伝わってやけに釣りたくなるが、どうしても雨は収まらない。少し天気まわりが早くなったか。尾根筋がどんどん見えなくなってくる。あきらめて、お風呂にする。
お風呂は、みみずくの湯。先日、リニューアルしたのだ。洗い場や天井、壁などを修繕した様子で、大変に気持ちがいい。隣の畑で仕事をする人がいれば丸見えだろうと思われる露天風呂もそのままで安心した。お湯は相変わらずいい。若い人はしばしばこれを熱いと表現する。シャワー中心のせいなのか、最初の湯ざわりの強さをどうやらそう感じてしまうらしい。ゆっくり浸かっていてもよく温まりながらものぼせないお湯なのだ。もったいない話だ。
いつだったか、第二郷の湯でそんなことを叫びながら散々うめられて、その連中が20秒ほどつかってあがってしまい、湯温が上がるまで随分待たされた。思い出すと、小さい頃銭湯でもじじいは熱い湯が好きだった。僕もそういうじじいになってきたということか。めでたいではないか。
木崎湖の周辺でアーティスティックなイベントがあるようで気になったが、雨では堪能しきれぬと、悔しながら白馬を後にした。カーオーディオから流れる落語を「芝浜」にしてくれとリクエストした彼女は、爆睡したままだった。