ロケ地サイトというのを見ていて

昨晩、日本映画専門チャンネルでやっていた「テルマエロマエ」を見ていた。どおってことない映画だが、阿部寛の真面目にとぼけた演技は好きなので、最後まで見てしまった。どこの温泉だろうとサイトで調べたら伊豆や那須らしい。ほお、こうやってロケ地を検索できるサイトもあるんだな。それで、最近、映画のロケ地とかってんでえらく息巻いている県内の場所を調べてみた。
結果的に言うと、何にもないのである。いや、「レイルウェイズ2」の宇奈月温泉まで続く鉄道なんかはあったけれど、「少年時代」もないし、ほぼ興行動員の半数がロケ地の地元とまで言われた映画なんかもない。そうなんだ。僕らは物語を味わっているわけで、ロケ地がどこかはそれほど関係がない。ああ、ここだったなとしみじみ浸るのはその風景ではなく、物語なのだから。
だけど、時々、その土地の霊性に引っ張られて物語が広がることもある。そこでなければ紡げない物語もある。「東京物語」で現れる尾道は、実にわずかな時間しか出てこないものの、その風景は強烈な印象をもって物語や人物に照射されている。実際、僕も「時をかける少女」を探して尾道を訪ねている。
考えてみると、テレビや映画なんかはこれだけたくさん吐き出されているわけで、ロケ地などごまんとある。テレビに出た、映ったなどということで付加価値を感じるメンタリティーがすでにどうかしているのだろう。
地元の大学生が地域振興の研究で立ち上げたショップは注目されないけれど、w大学やk大学などがこの土地にやってきて行うプロジェクトは大きく喧伝される。自分たちの価値を自分たちで評価できない感性が、ロケ地観光などを押し上げているとすると、足元のない美人画、幽霊ってことだけど、に違いない。ホラー映画にはなるか。