渓流最終日、黒部川

渓流は最終日になった。秋晴れ。澄み切った青空に、乾いた風が動く。ただただ、ぼんやりしていても気持ちのよい日。
今日は、午後3時すぎに川にはいる。思いのほか夕暮れは早く、午後6時には真っ暗になってしまうのだ。
Oポイントにいくと、どうやらなんかしていたらしく、ラフティングのトラックとバス。それではと、Y谷出合いで流すも、どうも反応が悪い。きれいに流れているのになあ。ウェーダーがないので長靴では探れる場所も限られてくる。
それではと、U谷出合いに移動。ここは、今とても入りにくい。藪が多く、水量が多い日には相当難儀する。黒部川の釣り場は概ねこういう感じ。せめて川への取り付きだけでもいくつか進入路を作るのも大切な整備だと思う。知っている人にしかわからないような釣り場では、所詮市場は拡大しない。
橋下の大きなプールで、わずかにライズあり。チビメであろう。それでもライズが取れるならと、いろいろ試す。結局、渓流では使ったことのないグリフィスナットが有効で、チビメをいくらか釣った。
最後は、沈めてみたが、反応なく、帰宅可能までぎりぎり粘ると、秋の日は釣瓶落とし、あっと言う間に暗くなり、少々剣呑な思いをしてクルマまで戻った。
最終日。穏やかな谷底で、山の残照を眺めて静かな気持ちになっていた。小さく生きたいな。なぜか、そんなことを考えた。
名誉栄達、立身出世、財産資産。そんなことに価値を置きたくない。ウェーダーひとつに難儀しながら、僕はこんなに釣りを楽しめているじゃないか。それでいい。感嘆の感情は湧いたが、ことばに表現できるものではなかった。
また、来年もいい川で遊びたい。