水の女

近所にGEOが出来て50円でレンタルしているので、TSUTAYAも張り合って50円で新作も貸し出してくれる。けっこうなことでせいぜい競争してください。
それで、攻殻機動隊の6、7と借りてきて、ついでに、「水の女」を借りてきた。
水の女」はUAが主演した映画で、ギリシアの映画祭やロバート・レッドフォードが主宰するサンダンス映画祭で賞をいただいたもの。というよりも、ボクの興味は若い頃同じジャズ喫茶に出入りし、ことばのボク、映像の杉森とオーナーに言わしめた杉森秀則さんの監督作品なのだ。
彼の名前を聞いたのは、8ミリフィルムでぴあかなんかの賞を取った頃で、早稲田に在学中だったと思う。ボクはその頃ジャズ批評が大好きで、当時流行のポスト構造主義と合わせながら稚拙な論考を繰り返していた。杉森さんは富山にいた時分からすでに普通以上のオーラを持っていて、特にDCにこだわっていた。いや、正直に言うと、今回「水の女」を見てもわかったが、色なんだ、この人がこだわっていたのは。8ミリフィルムでの入賞作も確か「グレイ」とか言って、DCの服来た人が夜を彷徨う、そんなもののはずだ。
その後、NHKに入社し、退社後クリエイティブな仕事をしていたと聞いていたが、ある日、UAと浅野忠信が出た映画があると人に言われて、クレジットを見ると、あれ、杉森さんじゃないか。そんな具合だったのだ。
映画のことをちゃんと書いておかないと。杉森さんが神話だと言っているように、UAという巫硯(ふげき)の物語である。巫硯が最後に火の男を受け入れきれずに物語は破綻する。実は、たったそれだけの映画なのだろうと思う。感心したのは、UAがずっとノースリープのワンピース中心の衣装を纏うことだ。それが、とても安直だけど、縄文の衣装に見えて仕方がない。
やけに映像はきれいで、映画館で見たかった。自宅の24インチワイドブラウン管では描ききれない空間がある。
同県出身の映画監督は最近けっこういろんな仕事をしていて、「釣りバカ」の本木克英や「陰陽師」の○○(忘れた)が有名だが、県出身であるだけで価値判断を保留されている場合が少なくない。「釣りバカ」の県ロケなどはひどいもので、どう考えても広報番組で、ああ、ここはあそこだとか、ここはあんな場所からこう撮ったものに違いないとそんな興味をそそるように作ってあって異様に幻滅する。そんなことで映画の価値を損ねてどうすると思うが、「水の女」についてはそんな心配は要らないので純粋に味わえる。
この夏、この町でテレビドラマを撮影した。この国の、あるいは、世界の、どこであってもかまわないような映像を作るお手伝いをした。そうでなければ、作品にはならない。ことばのボクが少しだけ映像の体験をしたわけである。残念ながらDVDは市販されないが。

水の女 [DVD]

水の女 [DVD]

ところで、仮面ライダー響の石田監督も同じ県の出身。こちらは実家も年齢もごく近所。