ニレ池

前々からフライをやりたいと言っていた眼鏡屋といっしょにニレ池へ。トライアルやガラス職人もやっているような人なので、きっとフライは気に入るだろうと思っていたが、定休日などの関係もあってなかなか日程が合わず、この日になった。
9時少し前にニレ池到着。釣りは子どもの頃やっただけというので、とりあえず、フライの結び方だけ予習してきておいてもらった。あとは実地。ニレ池の高温傾向もどうやらこの日は一段落。雨でも降りそうな気候。魚は少し上ずっている感じがあって少々期待もあり。
フライのシステムを簡単に説明して、さっそく水辺に立つ。最初は、サイドキャストでロッドの曲がり具合とループを見ながらキャスティングの仕組みを理解してもらう。幸い人が少ないので右左の岸際に落とせる。視認性と釣れそうな可能性の高さを考えて、チェルノブイリアントを結んでおく。ターンオーバーも遅くなりがちで手首を返すとうまくいかないことも気付かせたいと考えた。目論見はそのままはまり、数投目には、ちゃんとかかった。続けて、かかった。3尾目には自分でランディング。すっかり、フライフィッシングである。直に、ロールキャストも憶えた。
ドライで何とか1尾と思っていたが、その目標は自分で作ったフライで1尾に変えた。
11時頃になるとぱたっと釣れなくなる。技術が必要な時間帯で、ボクの方はプードルでぼんぼんかかる。今日は、ドライでいくらでも釣れそうな気がした。実際そのとおりだったのだが、それは技術の問題もあると、彼を見ていてよくわかった。
彼の場合、やけにバラシが多い。抜けるのだ。合わせに何か課題があるらしい。少しずつ場所を変えて、午前中もう2尾追加したところでお昼にした。彼はそば好きなので、御母衣にした。ボクは荒挽き、彼はさらしな。さらに、ざるをもう1枚追加。なかなかのそば通で、そばに山葵を直接塗って食べている。
それにしても、こういうところをこうやって攻めるとこうかかると話しながらそのように釣れるというのはおもしろい。意図と釣りがしっかりと合ってくる部分におもしろさがあって、そのことを見た目で伝えられる。ようやくそんなことができるようになってきた。フライフィッシングに慣れたのと、ニレ池のことが少しわかってきたあたりに要因を見たい。
そばを食べていると雨。かなり激しい。午後一番はタイイングに決める。
まずは、スタンダード。職人を生業としているので、あっという間に身に付いてしまった。よいプロポーションのハックルフライを巻いた。続いて、ニンフ。ハーズイヤーを巻いてもらう。とりあえず、これでなんとかなるか。それでも#12のドライで釣れる局面は少なそうだ。と思ったのだが、午後は、むしろ、ニンフに反応が鈍い。ニンフで数尾かけたあと、切られて無くしたので、仕方なくさっき作ったハックルフライを付ける。これがまんまと当たり、かなり様子のよいのをキャッチ。とにかく、今日はこれで十分とさえ思えた。
桟橋に移って、バックキャストをしっかりと取ったキャスティングを勉強する。そのうえで、エッグとも思ったが、しぶいし、やはり、釣果を追う釣りに思えて、すぐにドライに代えたので、彼はフライ向きの人かもしれない。ドライで出るので、ボクもCDCを使ったトビケラのパターンを使ってよく釣った。風呂式グラスロッドなので釣り味も軽く、柔らかい。
やがて、夕刻が近づく。少し食い渋りもあってパターンを見つけにくい。と、彼がチェルノブイリアントを付けている。何となく来そうだというのだ。何尾かかけたのち、食い焦る中位の魚たちをかき分けるように出てきた大型のニジマスがはっきりと食った。そこから、バトルが始まった。ずいぶん慣れてきた彼も焦らずよく戦い抜いてキャッチ。48センチニジマス。ビギナーに女神は微笑む。
さらに暗くなって、ボクは水門で大当たり。1投1尾を繰り返す。桟橋の彼に声をかけたが気付かなかったようだ。それでも、満足したと話す彼と暗闇に包まれた白馬を後にした。
さっそく、その足で、何冊か本を買いに行くと言っていた。
「バイクでパックロッドを担いで釣りに行くなんてどうですか」
いいですね。そうしてください。いいパックロッドありますよ。