昨日は地上波の中継がない

プロ野球の開幕戦は史上最低視聴率だったとか言っているけれど、このところ野球はなかなかおもしろい。おもしろいのに視聴率が伸びないのはどうしたものかわからないが、勝ったとか、負けたくらいしか興味のないファンが結局多くて、心情的にひいきの球団があっただけで、それほど野球を知らない人も少なくなかったのかもしれない。そのため、最近の野球のおもしろさに呼応して、ファン偏差値の高い球団はプレーの質も良くなっているし、ファンもちゃんとついている。
昨日は、8回がおもしろかった。先制したジャイアンツに対して、今岡がうまくつなぐような動きで逆転したタイガース。しかし、ジャイアンツも粘る。8回1塁の阿部に代走。ここから動きが始まる。代走は小坂。かつて盗塁王を取っているが、実は足がそれほど速いわけではない。彼のうまさは走塁とスライディング。とりわけ、スライディングは止まる、滑る、立ち上がるというすべてのスライディングを使い分ける。その小坂を1塁において、ウイリアムズは実に神経質。牽制球を幾種類にも分けて投げ、1歩目を抑えに行く。実際、アウトかセーフかはその1歩で決まる。
昼間、次男のチームの練習試合があったが、ある子が打った打球が右中間に詰まるように落ち、彼は躊躇なく2塁へ。1歩及ばずアウトになったが、すばらしい走塁だった。守備もしっかりと緊張感をもって対応したのに、1歩である。その1歩を獲得する方法をこれからの課題にすればいいのだ。それが練習試合である。また、別の場面で、2塁から1本で帰ってきた選手がある。観客からは暴走との声があったが、次男はあれを行っておかないと次もいけないと言う。そのとおりだ。勝った負けた、アウトセーフを超えて、野球の質を高めたいという思いがあり、そのことが練習の質を決定している。
いくつかのサインがめまぐるしく交錯して、結局、エンドラン気味に走った小坂、打者の木村はボール球を見逃し結果、小坂の盗塁成功。次の球を難なく1塁ゴロとして、ランナーは3塁。1死3塁でホリンズを迎える。木村はすばらしい仕事をした。しかし、この局面をスポーツニュースは伝えることもないし、新聞では、木村の1塁ゴロだけである。木村のこのプレーで5/3イニングを残して藤川登板。イニングまたぎで引っぱり出した。局面ができた。これがプロの仕事だし、野球の醍醐味。
ホリンズは藤川の前に、1塁邪飛。転がせば、あるいは、とにかく外野に取らせればという場面。ホリンズに代打とも考えられたが、ここは面子を重視した。そして、代打矢野が三振。しかし、イニングまたぎの藤川を1番から迎えることになる。可能性を温存。9回に登板した真田(真田氏の末裔。風林火山もやっているので頑張ってほしい年だ)がしっかりと、全く充実して抑えていよいよ9回裏。真田の好投は、加藤とのバッテリーという点でもいろいろ期待がつなげるものがあった。
9回裏、藤川の調子は悪くない。ときどき高めに浮くだけ。ここにきて、カーブがくる。カウントをとられてしまうといよいよ藤川ペース。簡単に2死となるが、ここで小笠原。しぶとく、センター前に運ぶ。すごみのあるバッティング。最後は4番に回った。1発でサヨナラ。こういう場面を作れるのがプロである。李は藤川の速球をうまくバットに乗せるが、球威が勝り、センターフライ。しかし、力のある、局面を作り出していくというおもしろさをよく感じられる好ゲーム。しかし、きっと多くのこれまでの巨人ファンは、絶対に負けない馬場さんのように、いつも8−3くらいで勝ってしまうジャイアンツがお好みなのだろう。あるいは、K−1くらいの時間ならともかく、3時間も観ることに耐えられないのか。
ヒーローインタビューは、ホームランを打った台湾の4番林(リン)。これも悪くない光景。アジアは世界の野球の中心地のひとつなのだ。
途中経過を聞くと、ダルビッシュと斉藤が投げていた。エース対決である。3戦をそれぞれに分かち合っていた馴れ合い20勝の時代はとっくに終わった。そういう時代の解説者はもう退くべきである。あなた方の現役選手を見下したような物言いが、野球のつまらなさの根元だと、見ているものを不快にする根源だと知るべきである。
今日は幸い、ハイビジョンと地上波で中継。いい試合を期待したい。