焼山温泉

笹倉温泉には2度ほど行ったことがある。同じ焼山の麓にあるのだが、そちらは日本一の何とか成分を含むと言うことで、何となくそっちに行っている。今回は、まだ入ったことのない温泉ということで、焼山温泉清風館を選んだ。
糸魚川市には実に温泉が豊富。しかも、ひとつひとつの泉質が極めて個性的でもある。思いつくまま並べてみよう。
蓮華温泉。姫川温泉。糸魚川フォッサマグナ温泉。焼山温泉笹倉温泉。長者温泉。柵口温泉。最近では、シーサイドバレースキー場のところにも掘削温泉が出来た。ほかにも、いくつかの鉱泉や入浴施設をもっている。これを巡るだけで十分に楽しめるくらいだ。
今回の焼山温泉に何となく行ったことがなかったのは、実は泉質の表示にある。単純泉とあって、どうも有り難みに欠ける。いいお湯だといわれているのだが、今ひとつ信じ込む価値に乏しい。大体、パンフレットには、含硫黄−ナトリウム−炭酸水素・塩化物塩泉とある。しかし、正直、成分表示はそうではないので、どうしたものか悩むのだが、宿のパンフレットを信じると金太郎温泉に近いということになる。
山の温泉宿だが、バスをもっていて団体を集めている典型的な風景。頸城山塊の残雪を見てフロントに行くと、土日と連休は700円とある。ふだんは500円なので、仕方がないかと思いながら、彼女と2人分支払う。1時間ほどの約束で別れる。
連休中だが、それほど混んでいる印象はない。湯船は2つ。洗い場は空いているし、ジャグジーのある湯船には浸かる人もない。脱衣所には。湯の花のことが書かれて、最近、よく湯の花を湯あかと間違えて散々ネットで悪口書かれた話などを思い出す。
体を洗って湯に浸かると、驚いた。柔らかい。白い湯の花が散りばめたように揺らめいて、そのうえ、ややぬるめのボク好みのお湯。足だけつけていたが、それでも体まで暖気が回り出す。露天風呂へ移動。檜造りで眼前に雨に煙る頸城の山々。残雪と新緑が眩しい。実に気持ちがいい。少し下流の町では藤が美しく咲いていた。不月見池(つきみずのいけ)という名所があるのだ。春の風のように柔らかいお湯と相まって、疲れが抜けていく。1時間と約束したが、とてももたない。ロビーで待っていると同じ感想をもった彼女が上がってきた。
外にでると濃い霧。フォグランプがないと前が見えない。気温が下がってきたのだろう。あるいは、雪解け水によるものか。ロビーにいた人が、この谷の人は、笹倉は湯冷めが速いので夏の湯、この焼山温泉は冬の湯というそうだと、話していた。納得できる噂である。
焼山温泉清風館