A川で3人釣り

12年前のテレビ取材がもとで、今回、3人での釣り。
A川でなくてはならないという条件が厳しく、濁りがあって魚の反応も悪い。そのうえ、晴れるととんでもなく紫外線が強く、釣りをするような環境ではない。が、この日しかなく、温泉の周辺での釣りを強行。
もともと、数人で釣りをするのは得意ではない。釣って欲しいと言われてもなかなかそうはいかない。ボクは釣り芸人ではない。何とか、いい恵みがやってくることだけを祈念していた。
午前中は、ハマコーのプールから少し上流。たまに反応があるが、かかる気配が薄い。わらびやでそばを食べて、午後からはY谷に入ろうとするが、谷まで降りれない。谷からの流れ込みはクリアなので、そのあたりを期待して右岸で降りる場所を探す。うまくいい場所を見付けて、bakkenくんに釣らせて、ボクはY谷を目指すが、深場に遮られてとても行けそうにない。そのうえ、風も強く、まったくタフな釣りになった。
しかし、bakkenくんの強運がヤマメを引き寄せる。これでノーフィッシュの憂き目はなくなった。安心してシビアに攻めるが、もともと川を読み、ライズを取るのが好きな方で、こう何も無い中から引き出すのは苦手。いろいろ試すがダメ。最初にY谷を目指して遡行した際に、少々乱暴に歩いたのかもしれない。まだまだ気配があるが、絵面も考えて、昨日ロケハンしておいたU谷の出会いを狙う。U谷の階段状の部分には必ずイワナが出る。しかし、絵にはならないので、わずかなライズを狙う。幸いウグイが群れていて、見えている魚に合わせる釣り。これには、同行者も喜んでくれて、まあ、そんなものかと安心する。適当にウグイもかかり、bakkenくんは、まんまとイワナもかけた。そのうち、またヤマメをかけ、メインゲストにも日没直前ヤマメがかかる。喜んでもらえた。
ボクは坊主。いつでもこんなものだが、終了後、ブユに噛まれて、そうかグリフィスナットという手があったかと思ったが、すでに真っ暗。川岸の旅館の灯りが川を照らしている。窓から女の子の声で「ヤッホー」と聞こえたので、「ヤッホー」と返した。
いくつかのインタビューで12年間のことをいくらか思い出した。自分がやってきたことを誇らしく思うよりも、過ぎ去っていったものや時間への哀切が去来する。もう、ああはなれないのだなと思いながらも、川がいつだってボクらを悩ませ、ままならぬままでそこを流れることに悔しくもうれしく感じていた。
bakkenくんはやっぱりA川の水が体内に巡っている。それには、抗しきれない。しかし、その水の所以の結節点にボクもいたのかなと、ほんの少しだけ、そのことは自慢しようと思った。
いつか、BSフジで流れるらしいのだが、いつものように見落とすに違いない。これまでいろいろな描かれ方をしてきたが、こと映像に関していえば予想を超えたことはない。想像力とはいよいよ偉大である。