黒部川

平日が休みだとどうすればいいのか所在なくいろいろたまっていた雑事を片付けていたらすっかり夕方に。慌てて黒部川に向かう。
初春と初秋の、そうちょうどお彼岸頃の黒部川は清冽で憂愁を湛えていっそう美しい夕暮れに出会える。
今日は、谷井さんのプールから入ることにした。

すっかり河原は落ち着いて、一時は全く埋まっていた谷井さんのプールも少し面影を取り戻してきた。下流の逆巻く淵は往事の響きを立てている。河原にはボク一人。静かだ。川の音に包まれている感じなのだが、ときどき、ライズがあり、案外その音だけは耳にも届く。
釣れないが、川にたつだけでいいかと思えてきた。
音沢に移動。良太の顔が見たくなった。
平成7年の大出水で洗い流された河原もすっかり森のようになっている。嘘だと思うくらいに反応がないが、小さい小さいヤマメがかかって、水からあげようとする間際にどっかに行ってしまった。ボクらしい。
苔に足を取られ転倒。幸い何ともなく、良太に救われた思い。ドツマキの下まで歩くことにした。サギの声が響く。ここから上流だけ、不思議にこんなこもった感じでそれでいて上空に突き抜けるような音の響きをもつ。川の両岸に切り立った壁でもあるようなのだ。
道路に上がって、川にお辞儀。このところのしぐさである。
ゆっくりと歩く。
車を止めてある場所から道路にはひどくえぐれたところがあるのだが、今の車は何の苦もなく乗り切る。そうか、ずいぶん久しぶりだったんだな。