マー君、1億数千万円

ほんとうはいくらもらっているのか知らないけれど、楽天の田中が1億数千万円増らしい。早稲田の斎藤とはずいぶん差が出はじめた。
元々プロ向きと言われていたが、それでも結果を残してきたのは素晴らしい。物怖じせず、積極的に恥をかくつもりで前向きにやっていくのは関西出身者らしいが、掃きだめ球団のイメージが強かった楽天のチームカラーを一変させた功績は、間違いなくあるだろう。
伝説の始まりは、あの夏の大会決勝再試合の最終打者。チップで三振になったが、苦笑いしながら、こんなものかと斎藤を一瞥して泣き崩れるわけでもなく、そのままダッグアウトに戻っていった後ろ姿にあった。これが始まりとでも言いたげな背中には、未来を感じさせるものがあった。今だから言っているわけではない。多くの人々があの瞬間に気付いたことだ。
一方の斎藤はいよいよ追い込まれた感じがある。プロ向き、そうでないという性格があるとすれば、後者だろう。見かけの聡明さに反して、どうにももどかしい。自分を見失うというのか、何を目指しているのかわからなくなる。プレッシャーのきつさは承知だろうが、突き抜けていくものが感じられないという点で、どこか迷いばかりが目に付く。自由選択入団を想定しての早大進学はドラフトの改正で望めなくなり、今となっては、大学通算記録も到底おぼつかない。早稲田の先輩、越智ほどでもなく、1年目から現代野球の中継ぎができるほどの球威にも達しておらず、6回4失点が計算できる程度の先発をローテーションに加えるような余裕のある球団はない。
時代が人を作るということばがあるが、マー君の成功やダルビッシュの勇ましさを見ていると、果敢に、そして、超然と高みを目指すものがアスリートとしての栄光を手に入れられる時代になったと思える。それは、プロ野球の成熟であり、その引き金はメジャーリーグも含めた野球のグローバル化にあるのだとしたら、主力のメジャー流出もそう悪くはなかったかと考えていいだろう。