シーサイド、ノートラック

仕事の関係で誘われてシーサイドバレースキー場に行ってきた。
朝から雨模様で、スキー場も湿った雪が終日降り続いた。スキー場はどうしたことか、圧雪がない。上部で行われている大会の関係か、あるいは、今朝からの雪で全く間に合わないのか、数十年前のスキー場を彷彿とする。
おかげでゲレンデのいたるところにノートラックが出現。パウダー好きには、相当に重い雪だけれども、爽快な場所になった。
ところが、同行する人に遠慮してアルペンを履いてしまったのだ。ちょっと前回に積み残した課題を解決したい気持ちもあったので、うっかりそんなものを履いてしまった。上手な方がいっしょに来るというので習おうと思っていたのもある。
一面のパウダーを前にして、ピステン専用の板のようなアルペンで難渋するが、それはそれなりに楽しい。何度もクラッシュしながら、十数年を経てパウダーに馴染み始めている自分にうれしくなる。
とにかくスキーを横にしたら回り込んでくれない。カービングもへったくれもなく、フォールラインに一目散。
第6ゲレンデのノートラックでクラッシュ。板も外れ帽子も飛んでいった。ふと視界が暗い。雪のためかと思うが、それにしてはピントが合わない。眼鏡がないのだ。近づいてきた同行者を少し遠ざけて、雪の中を探す。順番に雪をどけていくが、反応がない。買ったばかりの眼鏡を失ったかなどと思っていたが、
「もうひとつ眼鏡かけていたんですか」
と声が出る。額に眼鏡が載っているらしい。外れなかったんだ。おでこに眼鏡をのせて、ないないと騒いでいたわけだ。波平か、ボクは。
ボクは装備万全でまだまだいけるのだが、昔のウェーデルン系の同行者はけっこうつらいらしい。アルペンの板もなかなかで、だいぶならされてきたナチュラルパッキングのバーンのそこらにできた雪だまりを吹き飛ばしながらカービングできるのだ。これはこれでおもしろいが、テレマークならもっと楽しいだろうと、ふつふつ沸いてきた。
それで休憩の時間にさっと履き替えて、テレマークで楽しむことにした。
足が疲れているので、なかなか思うように立てず、そのうえ、あんなに頑丈だと思っていた靴が、アルペンのあとだとおそろしく柔らかい。もっともそれにはすぐにフィット。人間の感覚はたいしたものだ。
交換して直後に転倒。ちょっと首をひねった感じがある。年を取ったんだな。転倒の状況が記憶できていない。人の防衛反応で危険なことを記憶から削除してしまうようだ。無理ができない年齢に入っている。そのうえ、太ももが相当に萎えていて、1本まともに滑りきれない。どうも、重心の置き場所がよくないのだ。これを修正するには、一度細板でチェックする必要がある。それを今シーズンサボっている。
ゲレンデ脇の、アルペンの人なら敬遠する場所にテレマークで突っ込む。浮遊感覚と右左へのスイング感がたまらない。やっぱり、ボクはテレマーカーでありたい。
今後は、家族のスキルアップのためにアルペンをすることはあっても、自分のためにアルペンを履くことはないな、きっと。うまく行かなくても、下手くそでも、楽しいスキーがしたい。アルペンを履いたときに、自分の中に生まれる攻撃性向もあまり好きになれない部分だ。
ずんずん降り積もる雪を尻目にスキー場を後にしたが、アウトランダーなので全く平気だったが、帰りに姫川沿いでコースアウト。トラクションコントロールとABSに助けられた。こういうところも、注意しておかないと、昔と同じようにできることは多くない。