とある人物

彼とはそんなに面識もなかった。が、少し助けてやりたいと思った。人生を賭けて戦おうとしている、そう思えたからだ。何かボクがなくしてしまった夢をそこに託したいとも思っていた。
ちょっとした偽リーク情報が流れた。
ボクが過大評価されているともとれる奇妙なものだったが、彼は彼が挑戦していこうとする世界に似合わない純粋さで、それに真っ向反発してきた。そこまでだった。
「脳天気な理想主義者」しか彼の戦いを勝利させる道はないと思っていたのだが、そうした仮面をつけるまでもなく、彼は「脳天気な理想主義者」であった。ただし、その理想は、矮小で、真っ白で、学級委員程度の社会にしか通用しないものであった。
彼との接触を断った。
街頭で見かけた。がんばれ。君の理想がどこまで通用するか。それによって、ボクが人を見誤っているのなら、後悔しよう。