動けない

電車から降りても動けなくて、そのままホームのベンチに腰を下ろした。久しぶりだな、こんな感覚。
ぼんやりと浪人していた季節を考えていた。留年の危機に責めさいなまされた季節を思い出していた。こんな黄砂の降る頃だった。悪い思い出ではない。が、心が沸き立つことなく風景に同化していくような、空虚な充実感なのだ。
仕事に就くといきなり、妙な指示。こちらは厳しく仕事をしているつもりなのだが、指示が甘い。結局、そのことは判断する余地がこれまでにも十分あったのに。
午後から、山間の施設で会合。途中、お気に入りのそば屋による。
誰もいなくなった店内で、そば湯を賞味し、はっきりと息を大きくしてご馳走様を唱える。少し落ち着く。
店の方が玄関先まで見送ってくださる。いい店だ。そばも旨いが、揚げたての天むすがメニューに追加されていた。甘みのあるそばによく似合っていた。そば湯も適度にそば粉を溶いてくださっているよう。
会合の途中で携帯電話。圏外に近かったが、火急の状態でとんぼ返りを余儀なくされる。そこから、テンションの高い時間を過ごして、ようやく自宅で息をついている。
難しい。見えているものが違うのだろうな。
こういう経験いくつかやってきた。
そのたび、そろそろ潮時と考えてしまうのだし、また、たいていそうだった。ボク自身の違和感は紛れもなく、周囲からの違和感でもある。