プルートウ

PLUTO (1) (ビッグコミックス)

PLUTO (1) (ビッグコミックス)

鉄腕アトム」を原作にする浦沢直樹のコミック。
素晴らしい出来だ。
人と人造物の違いについてはしばしばSF的なテーマになっているが、それそのまま人とは何かと「問いかけ」を立てられるものでもある。いや、それよりもSFほど哲学的に人を内省的に、あるいは、関係として定義し、定義できるのかと問いかけてきたものはない。そういう部分がボクらの80年代的なディコンストラクションの試みと相まって現在も逃れようもなく考え方やふるまいを覆っているのだが、それはまた本編のサイトで書く。
攻殻機動隊では、AIと人を分けるものとして「ゴースト」という考え方を持ち込んでいる。しかし、それすらもAIがゴーストを生む可能性を示しているし、「プルートウ」でもAIが夢を見る事態として現れている。逆に、ノース2号の物語では、AIが過去の記憶をリピートするとして、メモリーが記録となり、価値の関係性を無視した状態でストレスにさえできない状態が訪れている描写がある。
モリーの問題は、浦沢の「20世紀少年」(20は算用数字でした)
20世紀少年―本格科学冒険漫画 (16) (ビッグコミックス)

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (16) (ビッグコミックス)

にもしばしば現れるし、ボクらは、ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」(ブレード・ランナーや「トータル・リコール」で提示されたように記憶を人工的に刷り込まれるという諸相に向き合うことを知っている。
注目すべきコミックである。
最近、その傾向から逃げていたし。ここだけでも論考の対象にしてリハビリしてみたい。
アトム、ゴジラなどその出自を無視してヒーローに育てていた時代は確実に終わっている。今日の「デカレンジャー」見てさえそう思う。見かけは「特捜最前線」である。わざとそう作っているんだが。