小さな幸せ

金太郎温泉がリニューアルする前のこと。まだ、小さかった子どもたちを連れてお湯に入りに行った。親の勝手で子どもが決して好きでない温泉に入るわけだ。それなりに遊んでいたんだけど、ゆっくりと浸かりたいという親の思いに気を遣っているのもわかって、そこそこに上がった。どうやら、脱衣所の前にある前時代的なゲームコーナーに興味があったらしい。お湯から出てみるともう電源が落ちていて、暗くなったパチンコの前でじっと座っている次男が何となく可愛そうに思えた。それでも電源をわざわざ入れてもらうほどのことでもないと、何も言わずに帰ろうと促した。すると、従業員のおばさんが「電気入れてあげようか」と一言。次男の顔が輝いた。とかく、いろんなことにがまんをさせてきた子なので、その表情にボクはうろたえた。「ああ、そうしていただけますか」
電気が入った夜店のパチンコ台のようなもので、次男は楽しんだ。なかなか終わらない。けっこう入るんだ。従業員のおばさんもうれしそうに見ている。勤務時間もあるんだろうに。
ボクら家族は次男がうれしそうにしているのを見てみんなうれしくなった。
幸せって、そんな大きなものじゃない。ときどきに、そんなことに気付かされていたのが子育ての頃だった。