商人宿

旅先でいい宿に出会うのは気持ちがいい。ここでは、豪華だったり、食事がどうの、風呂がどうのというのは基本的にどうでもいいことで、要は他の目的の達成のためにくつろげて煩わしさのないところがいい。
うちの町の駅前にもこういうお宿があって、この町で泊まるには、一つには海岸沿いの民宿でおいしい魚を食べるか、こうした商人宿を使う。だけど、そんな情報はほかの土地だとなかなかつかめないので、ときどきに感じのいい佇まいを見つけては残念がるのである。
フライの雑誌」のサイトにカブラー斉藤氏連載コラム第10回「民宿まねき食堂?前編」が掲載されていて、つげ義春を思いだした。名作「リアリズムの宿」。
凄惨な生活のリアリティを困惑しながら旅という非日常が他ならぬ旅先の日常であることも教えてくれる作品で、むしろ、身勝手な旅人の思いがすれ違うことにおもしろさを感じさせる。
カブラーさんが出会った民宿まねき食堂もいい。屋根が反っていて(お寺ではない)、風呂がない。そもそも、宿か食堂かわからない。が、これは往々にして発見できる。飯を作るついでにやっていた宿の副業の食堂の方に重心が偏ったわけだ。何しろ安いのがいい。
残念だが、ボクにはこういうものにうまいこと出会う体質がないらしい。それよりも、探すのも面倒だし、飯食いに入るのも面倒なので、コンビニで食材を買いだしてテントに泊まってしまう体質がすでに最初からずれているか。2人用のテントに適当にものを持ち込んで夜を過ごすのがけっこう好きなのだ。天井の低いこんぢんまりとしたテント。本当はテントさえなくったっていいんだけどね。
あ、違うな。もともと、釣りで遠征なんかに行かないんだ(笑)