連携排砂

黒部川の連携排砂が始まった。ダムに溜まった砂、といえば聞こえはいいが、堆積したヘドロ状の土砂を下流に流す行為である。
最初に行われた排砂でおびただしいヘドロ化した土砂を排出してしまい、以来、問題化している。ダムができる前はもともと流れていたものを海に供給するだけだというのが理屈だが、1年をかけて流れていたものをほんの数日で流せば、どう考えても川自体のさまざまな処理能力の限界を超えるのはわかりきった話。何かを犠牲にしなければ成り立たない行為だと、だれもが思っているのに、うまく進まない現状は、そもそも川がどのようなスタンスでこの土地を流れているかを示していて興味深い。自然環境云々よりも、問題の複雑化の原因には社会的な要因が刻み込まれている。
今回は、出平ダムと下流宇奈月ダムの両方の排砂ゲートを開く連携排砂。途中の流程は見事なまでに水路と化す。見るも無惨な河床が残るのだ。
ことは漁業被害の話では済まない。この土地をどんな土地として住み続けるのかという市民意識の問題として考える必要があると思うのだが、あまりにも冷淡で無関心で、そのそぶりを見せることすら禁じられているかのような遠ざかっていく視線だけがそこに残る。
一方で、里川のホタルに歓喜し、まるで世界がかつての豊穣な様相を取り戻したかのように騒ぎ立てる現実もある。マクロを失っている、単一的な精神構造がよく示されているとも思える。
あの川を直視しろ。