猫殺し・ヤマメ殺し

日経に坂東眞砂子が書いた猫殺しのエッセイが反響を呼んでいるそうだ。記事を読んでいないのでいい加減な書き方になるが、飼い主の選択として、去勢避妊手術するか、あるいは、子猫を処分するかとなったら子猫を処分するとかいうものだそうで(これちゃんと確かめたいがなかなか見つからない)、江川紹子さんなんか朝のワイドショーで猫撫でながら非難していた。猫を撫でながらでないのなら少しは聞こうと思ったが、「こんなにかわいい猫を、何で」という調子では非難にしかならない。彼女のジャーナリストとしての批判精神はどこに置き忘れたのだろう。
牛だって、豚だって、ワニだって、ゴキブリでも「かわいい」と思うのは勝手で、それを論拠にされたのではもはや議論ではない。
先日、ある釣場で会った人がやけにヤマメにこだわるので、
「この池のヤマメはなぜか年を越せないそうで、仕方ないので食ってしまうといいらしいですよ」
と言ったら、はっきりとむっとして、
「ボクはすべてキャッチ&リリースで、食べたこともないし、食べることに興味はないし、ヤマメを釣るのが好きなんです」
と「ヤマメ殺し」でも見るように返された。食べてみれば、おいしいのに(笑)何よりも、ウグイよりも愛されてきた理由がその魚体の美しさだけではないことがおわかりになるだろう。
この方、かなり強烈な釣り方で、人のポイントに平気でつっこんでくる。まるで、自分の釣技を見せびらかしているみたいだった。その意味では、<スポーツフィッシング>を自認されているようだ。なかなかに激しい。#20くらいの小型ウェットを引いているらしい。(フライボックスも見せてもらったが、実に整然と大量のフライが陳列してあった。どうやら、マッチ・ザ・ハッチではなく、小さい方がエライ派の人らしい)そして、付け加えたのが、
「ボクはここでは7X以下しか使わない。それでもちゃんと釣れる(とれる)からね」
であった。
ボクのようにどうしても反応が鈍いので泣く泣く7Xで40センチなんて釣りをしている人のことはおわかりにならないだろうなあ。趣味や信条はよいとして、そのことをアドバンテージとして意識してしまう心情にはなかなか理解が及ばない。5Xくらいで楽に釣りたいのに、日中どうしても気取られて出てくれなくて、先細りしていく自虐的な快感は確かにあるけれど。
でも、その方、ボクが使っていたロッドには何の反応も見せなかった。ちょっとそこらにはないロッドなのだが、彼自身のフライフィッシングの範疇外だったのだろう。そういえば、ドライとウェットのシステムをそれぞれにセットした2本を、ロッド1本制限のある桟橋に持ち込んで、人のヒットポイントを狙っていた。そのうえ、ネットランディングはなし、岸に引きずり上げ、手で押さえつけて外していた。まさに、<スポーツフィッシング>。自信満々だったなあ。いい釣行だったけど、それだけがネガティブ。
でも、ボクこそ「ヤマメ殺し」として、今頃都内の飲み屋で笑われているのだろう。田舎の奴は野蛮で困る。下手くそなキャストと芋っぽいでかいドライとぶっといティペットで、短い堤防釣りでもするような長さの知らないロッドを使って、塗装の剥げたリールに、ベージュのライン。ああいうのが、フライの品を落としている。などと、スーパードライなど飲みながら肴にされているに違いない。