5年前、自律神経失調中

5年前、少しずつ自律神経失調症から離脱していたところへ、この事件。あの頃はいくつかの事件に過剰に身体反応があったりした。事件の被害者を想像して、ちょっと亢奮状態になった。自分ではっきりと自覚しているのだが、心の状態とは裏腹に鼓動が奇妙に感じてしまうのだ。戻せない。ようやく、この頃、太極拳の呼吸に出会って何とか落ち着いた状態に入ったところだった。
疲れていたので早く床に付いていたら妻が声をかけた。
「ビルに飛行機が突っ込んだって」
「え」
寝ぼけながら答えた。
「香港か。中華航空か。やりかねん」
「ニューヨークらしいよ」
「んなこたあ、ないよ。もし、そうなら大事件だって」
しばらくして、
「もう一機突っ込んだって!」
その意味がよく理解できなかった。飛行機事故だと思っていたからだ。そんなに連続して同じエリアの同じシチュエーションの事故など滅多にあるわけはない。事件か、と思ったが、寝ぼけた頭には容易に整理が出来ない。
階下に降りてテレビを見ると、ワシントンの手嶋さんが淡々と状況を伝えている。その冷静で的確な口調が少しボクを落ち着かせていた。一体、ビルが倒れたらそれだけの人が犠牲になるのか。
やがて、ビルが崩壊し、ボクは、あの福岡の少年バスジャック事件以来の変調をきたした。世界もそれと同時にヒステリックに同調していった。幸いなことに、ボクはやがてその状態を脱したが、この5年、世界はその変調から逃れられないばかりか、日本には理念なきタカ派という新たなテロリズムが政権を持とうとしている。