金沢・東山2

朝日岳の北、八兵衛平や吹上のコル、長栂山にかけての風景は、極楽というのがこの世に現出するとしたらこんなものだろうと思わせる。なかでも、照葉の池の周辺は、残雪、白馬岳、小蓮華山、朝日岳、オオシラビソ、たくさんの高山植物に池の水が映えて、これはもう、何時間そのままでいても飽きないような、いや、時間が止まってしまったような、それでいていつも同じように柔らかな風が吹いている、閑雅な午前が永遠に続くような場所なんだけれども、その照葉の池の由来がまた粋である。
朝日岳周辺の地名のふりかたは多くを塚本繁松によっていて、この冠松次郎を黒部峡谷へと導いた山の文人は、また、ある意味でも達者なところがあって、こういう場所で多くを語りにくいのだが、色も好んでおられたようでもある。照葉(てるは)は、どうやら塚本贔屓の芸妓の名前らしい。
そのことを知っていたのだが、金沢の東山の茶屋にこの名前を見付けた。どうやら、源氏名としてはしっかりとバリエーションにふくまれているものか。何だか、上がってみたい気がしたが、この日は、卯辰で松茸づくし。