松井3番

この間から岡島や1000試合のイチローなんかの話題が多いメジャーリーグだが、ここ数試合松井が3番を打ってることをテレビなどはどうも軽視しているように思う。
野球にとって中心打者というのは4番と言われているのだが、「3番最強説」というのがある。4番はランナーのいる場面で登場し、クリーンナップする機会が多いのだが、3番は仮に1,2番が凡退したあとでも1回から打席に立ち、例えば、そのバッターがホームランの可能性の高いものならそのまま1点を取れるし、また、2塁打でもランナー2塁2死で4番である。ランナーがいれば一気に大量点の局面を作れるわけで、3番の役割は、とりわけ現代野球にとっては極めて重要だ。松井3番、落合4番のジャイアンツが隔年で優勝していたのもそうした効果を十分に示している。のちに、4番には清原が座るが、それも重厚でかつスピード感を感じさせる布陣であった。
加えて3番には、長打力、走力、判断力といった総合性能の高い打者がつく場合が多い。4番は打てても3番はちょっとという大打者が多いのもその役割ゆえだ。
しかし、そうした3番の機能的な価値とは別に、ヤンキースの3番はかのベーブ・ルースの場所だ。ここにつくことは特別の意味をもつ。実際、4番としての実績もある松井は2年前の終盤に1試合だけ3番に座ったが、それきりで、ヤンキースで重要視されるポストシーズンの4番を務めても、そこはなかなか巡ってこなかった。ヤンキースの今シーズンの低迷のせいであっても、3番が松井にめぐってきて、今年は抑えられているが相性のいいレッドソックス相手に、しかも、負ければ自力優勝が消える試合で先制ホームランを打つ。これはもっと評価されていいのではないか。
野球がボクらの文化になって久しい。しかし、どうやらこの国のみなさんは勝ち負けだとか、成績を優先し、その場その場で生じる野球特有の物語やレジェンドに疎く、そのため、味わいも薄っぺらな、そうグルメ番組の「おいしい」と同じように、「感動」「うれしい」の単純な感情表現であっさりと通り過ぎてしまう。何とかヒルズと同じだ。そこにはただ商店が並んでいるだけで、レジェンドの欠片もない。
ちょっとだけ付け加えると、田中幸雄の2000本安打がどこまで素晴らしいのか、ボクにはとんとわからないのだが、彼のレジェンドに何かあるのなら聞かせて欲しい。入団時、同姓同名の投手がいたとか、KKと同期入団。それくらいである。
1番最強説というのもあるんだが、イチローはちょっと違うようにも思う。ハレー彗星の年の真弓はそうだったかもしれないと思うが、今年の高橋がそんな様子になればいいとも思う。