球際

敗因は直接的にではなく、いろいろな布石にある。
布石を敷くに稚拙な場合にはそれが遠因となって致命的となる。
この試合は、9回で終わるはずだったが、技術とか経験とか能力とかではなく、また、舞台云々では決してなく、最後に野球に対するぎりぎりのところでのいわゆる球際で決まる。
9回。センター前ヒットにセンターが寄せられず、2バウンドで処理している。センターは確実性をもって、そして相手ベンチ(ダックアウトだが)はそれを漫然とした処理と見る。
1死1,2塁。投手ゴロ。投手は1塁に投げる。それで、2死2,3塁を作る。2点差ゆえ、3塁はいいが、2死ならかえれる2塁にランナーを残した。投手の判断か、捕手の指示か、ベンチの声か。わからないが、2死で2塁に同点ランナーは怖い。
2死からセカンドを超え、センター右中間より手前に落ちるヒット。センターはこういう打球へのチャージが難しい。落下する場所の距離感がつかめず、さらに大観衆で打球音が死んでいる。足が微妙に合わず、飛び跳ねるようなリズムが少しずれた投げ方でホームへ。1塁手がスルーして、やや一塁よりの場所に、バウンド。1,2,3。捕手は本塁を離れられずもどかしくもボールを掴み、本塁上で2塁ランナーにタッチ。惜しくも間に合わず無念の同点。延長で敗れる。
力は完全に互角。打撃は間違いなく思い切りがよい分結果が上回った。あの場所で、これだけの力が出せるのは、多くの人々の勇気となった。
続く試合も9回にもつれる。勝てると思うといけないとよく言われるが、本当に勝負とは恐ろしい。勝負にこだわらなければ勝てないし、かといって勝負に執着するといよいよ勝てない。