小谷温泉・雨飾荘

久しぶりに小谷温泉まで。相変わらず、雨飾山は中高年に人気が高い。下山した登山客がそこらをたくさん歩いている。ある調査では今山を歩く中高年登山者は、十代、二十代に山に登ったことのある人たちだそうだ。例えば、学校登山などで立山や白馬岳、富士山などに登った人たちがある年月を経てかつての体験をまさぐるように再び山に向かい始めたのだという。とすれば、今の中高年登山ブームはやがて費える。新規の中高年がいずれいなくなる。残念だが、その未来はそう遠くはないのだろう。各地のスキー場が子どもに力を入れ始めたのはその調査の反映らしい。バブル期にスキーに明け暮れた人々がやがて孫世代といっしょにスキー場に来てくれることを期待しているというのだ。これから生まれるその連鎖を何とかビジネスモデルにしようというのだろう。
顧みると、川に少年たちの姿を失って久しい。一方沸き返るようなつかみ取り大会の興奮。根こそぎ、余すことなく蕩尽する。その表情がどんな連鎖を生むのかと感じたのは20年前。いよいよ表情は、激しく猛々しく容赦なく魚を襲い、川を蹂躙する。連鎖はそうした方向に流れているのだろう。
さて、篤志で成り立つ露天風呂に入ろうとしたのだが、どうやら登山客でいっぱい。当初の予定通り雨飾荘に入る。ここの露天風呂は広く、大渚山の山頂を望める。以前は混浴だったが、今は仕切ができている。最初からその露天風呂に入ることにした。男性は、同じ脱衣所から内湯、露天の両方に行ける。
お湯は柔らかい。ナトリウム炭酸水素塩泉。このあたりの一番ポピュラーなお湯だ。露天は完全かけ流しだが、湯温は低い。それが幸いしていつまでも浸かっている。風が肌に当たり、ときどき射してくる陽光に心を漂わせ、疲れを癒した。
入浴料300円。格安。食堂には手打ちそばあり。昭和46年だかに建ったお宿は少々昭和臭さの残るレトロなムード。玄関前のブナが柔らかい。ぜひ、掌を当ててみたい。