小学生といっしょに

地元の小学校の子どもたちと立山登山。前日の秋涼な天候とはうってかわって、前線の南下による激しい雨が予想される中の出発。
幸いにして室堂までは秋らしい天の高い好天。しかし、能登半島の上には厚い雲が見え、虎視眈々と立山を睨んでいる。
ボクのようなサポーターが数名と、ガイドとして映画「点の記」のエキストラとしても出演しているSさんをお願いしてある。ある高名なガイドさんの息子さんだが、現在はご自身としても名前が高い。映画のポスターに出ている測量隊の列の後ろから2番目だそうだ。先頭も知っている人だった。やはり、芦峅ガイドが出てこないと格好が付くまい。しかし、物語のスター、宇治長治郎は剱岳に名前を残すが、もともとは立山カルデラ側、大山町和田、つまり、いわゆる有峰の山人。黒部にも足跡を残すが、当時の感覚でいえば、決して地元の者ではない。
Sさんのガイドは非常に適切だ。地元の学校ほどこうしたガイドを使わず、先生方だけで集団登山を実施するらしい。ただの登山でも難しいのに、よくそんな集団登山を先生たちだけでやる気になるものだ。今回も、ご家族がサポーターにつているのだが、サポーターのためのサポーターも必要になる場合があって、ボクはおそらくそのあたりに有効性を求められているのだと考えている。
室堂から見えていた山の姿は祓堂あたりで全く見えなくなった。黒っぽい雲に覆われ、激しい風が吹き上がる。子どもたちの装備はしっかりしているので、一の越で装備をもう一度調え、山頂を目指す。雨がきたところで引き返す段取り。
9月の山は空いている。ガイドの足取りにしたがって歩くが、あの出鱈目な夏の雄山エリアを知っていると、こうも歩きやすいものかと驚く。ガラ場ばかりを歩いている印象だが、どうしてちゃんと道があるんだ。行程は順調に進む。
三の越でとりあえず雨は落ちていない。視界は、15m。風は瞬間的に20mを超えていると思われる。気温はぐんぐん下がっていく。激しい山の天候に、子どもたちも真剣である。山頂に達して、とにかく社務所で弁当を食べさせてもらってとっとと下山することに決める。
山頂直下でも社務所さえ見えない。いきなり、展望板が現れ、三角点になる。社務所の前で弁当を食べるが、手がかじかんで箸が持てない。氷点に近づいている体感。早々に山頂を辞し、下りにかかる。
吹き上げる風がしばしば行程を止める。子どもたちはへこたれずに歩き続ける。上がった以上、下がるより他にない。それよりも、山の激しさを感じながら、人に支えられながら山を行くことを知る。
二の越の悪場を降りたところで雨。幸運である。一の越山荘で少し休ませていただいて、コンクリート道を下る。全員何とか行程を完了。
立山自然保護センターに入ると、Sさんの顔がある。一言二言交わして、再会を約す。ターミナルは観光客でいっぱいだ。この人たちは何を見ていくのだろう。
山を辞す。オオシラビソがガスから突き上げるように立ち、ブナや立山杉は太い胴体だけをボクらに晒していた。