[町歩き]上市

上市に出かける。
しっとりとしたいい町並みじゃないか。
そこらに「三丁目の夕日」のような光景が見える。
八百屋、荒物屋、貸本屋、中華そばの店。佇まいから人が見えるようでもある。
だが、多くは朽ちている。残念だが、どこの町にも見られる姿だ。荒廃の原因は、ボク自身も選択しているくらしの姿にあるのだろうが、何とかそういうものをせき止める方法はないのか。
ずっと依然、マックの広告で、今でいう古民家の机にふと置かれたMacSEという風景があった。オークビレッジが清見にもっている展示室にもそんな筐体が置かれているが、現代的と呼ばれる道具類とボクらがもともと持っていたくらしは決して対立しない。ようやく、時代はそのことに気づきつつあるが、むしろ、ボクらよりも少し上の世代が時代についていこうと懸命に焦り働いたおかげで、かつての風景を断絶した。金沢の東山は20年前よりも確実に「昔」を取り戻していて、それは若い世代にはっきりと受け入れられている。
都会風の似非田舎暮らしという地方幻想は、もう若い連中には必要ない。彼らはいつだって欲しいものを自らの傍らに引き寄せる価値観と手段を持っているのだ。
東京の都心部の方が、田舎より田舎らしさとでも表現できるくらしの匂いをもっている。
あこがれとねたみ。そのアンビバレンツな情況がこの町をこんなにしたんだなと思うと、余計に考えさせられた。今でも、この土地の多くの人々はブランドショップや有名チェーンが近所にできることに優越を感じている。