懐かしい味

昔、宇奈月温泉の温泉街にあった喫茶店。山の麓に降りて洒落た建物で西洋料理店をしていたが、いろいろあって閉店していた。ところが最近また喫茶店というのか、以前のような料理を出す店を作ったというので行ってみたら、本当に真横。上品な木質の感覚のお店ができあがっていた。ランチなどは予約が必要なので、コーヒーだけいただいてきたが、それはもうすわりごこちのよい椅子とテーブル。少し暇なのかマスターがテーブルで新聞を読んでいたが、その空気さえも柔らかい。
確か、「優しい時間」とかいうテレビドラマで寺尾聡が喫茶店のマスターをしていたが、そういう感じなのだ。雪が降ればまたいっそういいものかもしれない。コーヒーの味が変わらないのにも驚く。
実は、昼飯でも食べようと思って行ったがそういうものがなかったので、魚津の、これも懐かしい店に、ほぼ20年ぶりに入った。ここの肉スパゲティがおいしかった記憶がある。メニューにちゃんと残っていて、それもほとんど同じ値段。前に来たのは、確かバナナのオーナーが店を始めた頃だ。あいつ、シティカブリオレに乗っていたはずだ。
20年経っても味が変わっていないと思えるのはすごいことだ。ただ、今のボクにはボリュームが多すぎるし、味付けは濃い。旨いのはそれに違いないが、年を取ったんだな。
先日の5貫ばかりの寿司が上品で安くて旨かったわけで、そのくらいでちょうどいい年齢になっているのだ。
とすれば、変わらないことはとんでもないことなのだ。作り手が同じように年齢を重ねても、同じようにふるまえる。客商売とはすごいものだ。