某所

川で水生昆虫の標本を作ってから、魚津市の某所温泉へ。
いいお湯である。昔から子宝の鉱泉として知られているので、温まるよいお湯だということだ。最近はお客さんも減ってきたのか、いくつか閉めるところも出てきた様子で、今日訪ねた某所も例外ではない。
まず、玄関先に大きな犬がいる。犬嫌いには少々問題があるくらいの佇み方。彼女に露払いをさせて中に入る。いらっしゃいのことばがない。スリッパが散逸している。同時に入ってきたお客さん、たぶん、経営コンサルタントか何かの対応を優先する。館内が適度に飾られていて、いいなと前回思っていたが、調度はそのままで変化なく、花は枯れ、枝にはほこりがたまっていた。
お湯はすこぶるいい。柔らかく、肌あたりもよく、お湯切れもいい。気持ちのよい風呂だ。
しかし、浴室の清掃の関係か何かわからぬが、少々かび臭ささが充満。もしかしたら、固有の匂いかも知れない。それならいいのだが。
湯上がりにロビーに戻ると、そのコンサルタントの人と暗い話をしている。フロントにお客さんが来てもそのまま。ロビーの雑誌は3ヶ月前と同じ。
この変化のなさは、何かの変化を暗示している。前回はもう少し温かさが満ちていたのだが。ロビーを離れ玄関を出るが、ついに声はかからなかった。
好きなお湯なので、いつかもう1回行ってみるが、案外、いけないのかもしれないと気付かされてしまうような気もする。