大道とイチロー

イチローが200本安打を10年連続で打ったとかで世間が褒めている。たいしたものだと思うが釈然としない。今年で言えば、広島の広瀬のようなものか。打っているけれど、それでどうしたという話だ。
記録好きってのがたしかにいて、過去にだれもやったことがないことをすれば価値があるような言い方が、やっぱりいつも成立する。だけど、野球ってのはそんなものかなと思うことも少なくない。
昨日は、東京ドームでデーゲームを観戦。結果は、周知の通りで、スコア的にも内容的にも完敗。横浜も適当に追加点が入ってしまうという、大味な展開で、あーあという声が一番似合いそうだった。1球で鬩ぎあっているシーンがないとこうなる。
一番盛り上がったのは、3点差を追いかける8回脇谷が山口から四球をもらって代打大道。ドームが揺れるとよく実況が説明するけれど、本当に揺れている。粘った挙げ句のキャッチャーへの邪飛。これでゲームは決まったかなというムードが漂う。ということは、ここで大道がつなげばまだまだゲームがつながった。
大道の2009年日本シリーズの1打をみんなよく覚えているんだ。川藤みたいになって来たなあと思いながら、川藤の記録を見ると、実働18年で通算安打が211本。イチローが1年で達成する数字。だからといって、川藤がイチローの風下にいるわけではない。いくつかの印象的なシーンをちゃんと今でも思い出す。凡退さえだ。それはぎりぎりにしのぎ合っている現場から生まれた風景だ。イチローに、特にメジャーに行ってしまってからのイチローの、そんな場面を見ることは少なくなった。
イチローのもっている技術の素晴らしさが、今日は何本、あと何本。これから、何本。そんなことばで全部説明されてしまうことよりも、大道のリアルである。高めの速球にようやく食いついた男が、南海から21年も背負って来た重みを感じさせ凡退。
帰り、大道見れたからいいかっと叫ぶ20代のファン。
それも、賞賛される姿だ。
もう、ワールドシリーズに立つイチロー以外を褒めちゃいかんのだ。