ジャズのころ

学生の頃、ジャズ漬けだった。
月賦でプレーヤーとアンプを買うと、スピーカーが買えなかった。そこで自分でこしらえた。本当言うと、アンプも作りたかったが、かえって高付きそうで止めた。
レコードも買えなかった。
中古レコード店のアルバイト代は現品支給だった。
ジャズ喫茶の厨房の手伝いをして、好きなディスクをかけさせてもらっていた。
一日中、ジャズが響いていた。
捨てると言われていたサックスをもらって、デビッド・サンボーンと同じデュコフというマウスピースを手に入れてその気になって吹いていた。
ロリンズは橋の上だったそうだが、ボクはジョーのように橋の下。
たまに、サヨクと間違われることもあった。
確かに、サックスのケースは、パイプ爆弾でも隠せそうだ。
若き悩みを抱えたボクの夜は、ドルフィーコルトレーンがいっそう悲しみの輪郭を際だ出せて浮き彫りにしていた。
そういう夜も悪くないなあ。