林家こぶ平

このたび、九代目正蔵を襲名することになる。パレードの様子を見ていても涙が出てくる。よかったな。そんな思いにとらわれるのはなぜだろう。
林家三平の息子というよりも、林家の家元の名取りの嫡男に生まれ、若くして父を亡くし、ずいぶんと苦労してきたはずだ。ジャズ評論家、海老名泰久としてもなかなかいい仕事をし、タレントこぶ平は、へたれキャラで多くの人の共感を得ていた。それが、正蔵名跡である。少し意外感があったのだ。
林家正蔵正蔵亡き後、三平が継がずに、彦六が預かっていた。おそらくは三平に引き継ぐつもりでいたのに急逝。彦六も晩年にはこの名跡を返上。泰葉の旦那の春風亭小朝は当代一の技術をもつ落語家。もしかしたら、こちらに、という感触はだれもが持っていたはず。しかし、こぶ平、もともと古典に興味があり、芸を磨いてきた。まだ、高座で聞いたことはないが、一級だそうである。
それにしても東京の人はいい。芸人をああして励ましてくれる。それが文化なのだろうな。そして、お客さんあっての芸人との思いがこぶ平にあふれていて、それがボクを感じさせるのだろう。権威は自分から生まれるものではなく、周りから与えられるもので、それを自分のなかで精進するからいいものになるのだ。
田舎の名士はそうはいかない。権威を最初に持っていて、そこから「ご威光」を放つ。
少し騒ぎが落ち着いた頃に、正蔵の落語を聞きたいものだ。