開高健
サライが開高健の特集をしていた。
キングサーモンを釣り上げた開高健の表情が笑っていない。そうなんだ。この人の釣りはブンガクなんだ。魚を釣り上げているわけではなく、釣りをしているのだ。
なぜか、ルアーが多く、フライは最晩年のイギリスでの釣りしかないように、やっぱり書かれている。しかし、どうやらフライもやってはみていたようで、性分に合わないのか、フライの道具立てが気に入らないのか、どうもそれにのめり込むことはなかったようである。
食材そのものに旺盛な好奇心を向けたわけではない。むしろ、調理されたもの、人の飽くなき欲望を形に表したもの、そうしたものを貪っていた印象がある。
ルアーは武器で、武器とは欲望の兵器である。戦い、君臨する。そういうものの象徴かもしれない。ある意味、屈服することに美学をもつフライ(それも、ボクのフライだが)には、馴染まない、あるいは、そのことなどブンガクに成り得ないと思ったのか。
いずれにしても、悲しみをまとった釣りだ。
今回、開高健の小説をろくに読んでいないことに気付いた。
- 作者: 開高健,高橋昇
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1981/03/20
- メディア: 文庫
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