スキー場の点検

富山県富山市にある県営スキー場の点検が始まったと報道されていた。今シーズンで営業県を県と県の企業局が手放すとの方針のあるスキー場。廃業ではなく営業圏を手放すわけで、誰かが営業するならどうぞってことだ。
来場者数は約9万人でピーク時の半分だという。それではなかなか立ち行かないのもわかる。隣の粟巣野スキー場も経営権をもっていた鉄道会社の撤退に伴ってNPOが営業権をもち、ユニークな形態で昨年度ようやくわずかな黒字を作ったとか聞いているが、ボランティアに依存しているのも現状で、ここ近年の雪不足と首都圏からも関西圏からも中途半端な距離にあるため、関西ならもう少し先まで行けば、志賀でも妙高でも白馬でもあるわけだし、首都圏ならそうしたところを乗り越えてここまでくる価値はない。それでも、スキーブームの頃は穴場的に人気もあった(かもしれない)。いち早くゴンドラによる搬送を始め、北陸ではなかなか積極的な部類にあったと思う。今では、スキージャムなんかが完全に先を行っていると思うが。
奇妙なのは、最盛期に比較して半分の人間しか来ないスキー場の駐車場があふれ、リフト待ちが延々と続くことである。それはすなわち、もともと年間9万人を受け入れるようにはできていないということだ。キャパシティが足りないわけで、来場者に過重な負担を強いてきたことが結果的にわかる。最盛期はどうだったかというと、ゴンドラに乗るのに40分ほどかかった。滑り出すと狭いコースに人があふれていた。基本的に合っていなかったのだ。
題を間違えていた。スキー場はかくのごとく点検されてはいない。点検していたのはリフトの方であった。
ついでに書いておくと、このスキー場の致命的な欠陥はレイアウトである。初心者が上部ゲレンデに行くことができない。そのため、自然を味わいたい人にはその機会さえ与えられず、FMラジオの音声が流れっぱなしの喧しい下部ゲレンデで上部ゲレンデから飛ばして下ってくるスキーヤーに翻弄されながら、山を見上げ、足下を見つめて一日を過ごし、高くてうまくもない食事と、足を伸ばすスペースもなく、スキーというレジャーを味わって、挙げ句、2度と来ないのである。ついでに書くと、今のスキー場の衰退はスノーボーダーの隆盛であると、わけのわからんことを言っている人さえあって、なお哀しい。スノーボーダーによってようやく支えられているのが今のスキー場である。
今年は仕事で1回訪ねる予定。3年ぶりか。
せっかくなので、提言。
まず、このスキー場は基本的に地元のスキーヤーをメインの対象と考え、富山市中心市街地まで約40分しかかからないことを考えると、天気がいいからスキーでもしようかという人や、家族でちょっと出掛けようと朝になって考える人たちを少しでも呼び込めるようにして体質の改善を図る。そのための素地はないわけではない。
隣接地に家族旅行村があり、里山の丘らしい作りになっている。ここを雪遊びの広場として開放し、滑り台や勝手に雪の造形などを楽しめるような場所を作って、監視員じゃないけど、プレイリーダーを常駐する。休日だけでもいいけど。さらに、雪のアクティビティとして、スノーシュークロスカントリースキー、雪のネイチャリングなどを展開するプログラムを用意し、場合によっては、ケビンを使って宿泊も可能とする。そうすれば夜のプログラムも使えるため、これまで知られてこなかった夜の森などを深い場所まで行かなくても体験できる。
スキー場の方は、向かって右端のゲレンデを初心者用の一枚バーンとしてしっかりと整備し、講習の場所などもしっかりと確保して、ここで半日がんばればスキーが楽しめるといった場所として計画的に意図的に講習課程も含めて立案する。特に、キッズプログラムや家族プログラムを充実する。
ここまではやれない相談ではない。アクティビティを実施するリーダーは立山自然学校があるし、YMCAやその他のNPOも活動の場を持つことは歓迎だろうと思う。入門的なものと、少しレベルの高いものを段階的に用意し、入門は無料か、スキー場の利用料金内でまかなう。インストラクターにしても現在行っている上級者向けのものをこうした子どもや家族向けにふっていく。子どもを対象としたものは数多いが、家族プログラム、例えば、家族レッスンなどというものはなかなかない。ノウハウがあまりないこともあるのだが、せっかくスキーにきているのに家族離ればなれはいやという人も少なくない。うちの息子たちはそうだった。
次に、ゲレンデの上部である。ここは、モーグルや未圧雪という最近のトレンドに向けた整備が必要だろう。同時に大品山のスキーツアーや早朝スキーなどいう企画もあろうが、それは類似のものが多くあるのでそうしたものを真似たらいい。何せこれまではリフトが動き始めてから圧雪が始まっていたのだ。それを改善するだけでも違うだろう。
こうした動きに合わせて、スキーや用具についてのレンタルを充実するのも方法だ。今や年に1回2回のスキーでは道具を揃えられない。道具が古いのでスキーに行くのを躊躇している人も多いはずだ。国立少年自然の家がもっている程度の装備でかまわないので(けっこう、いいものがある)安心して使えるような体制をとってほしい。これまでは最新のものをもったいぶって出さない傾向があった。したがって、永遠に新製品を使う機会が繰り延べられている。馬鹿げた話だが経験がある。
最も大事なのは、スキーエリアの利用料金体系である。リフト券という考え方をこの際捨てる。入場券という考え方で、エリア内の施設を利用するための基本的な料金をまず支払う。それに加えて利用するアクティビティに従って料金を支払う。同時にオールマイティなパスポートも存在し、それが今のリフト券くらいの金額に設定する。要するにディズニーランドのチケット体系である。
また、近隣の需要を引き起こすために半日券や時間券を安く設定する。白馬エリアで最も半日券が安いのは、ハイランドの1500円、次に、白馬コルチナの2300円である。子ども料金は白馬コルチナが1200円で、これが意外な呼び水になっている。しかし、市街地からかなり遠くライバルがひしめく白馬エリアでなく、都市に近い特質を生かして、9時とか、10時くらいに自宅をでてきてちょっと遊んで何かおいしいもので食べていこうか、そんなユーザーのためには半日券1500円!子どもは800円。
こんなアイデアくらい、きっとどこにでもあるよね。現実に、隣の粟巣野はやっていて来客数を増やしている。あんなに駐車場もないようなスキー場でもそうなのだ。それなりの資本をつぎ込んでいるんだから。
食事の改善も必要なんだけど、それはお店が考えることなので、とりあえず、こんなところ。47みたいにピザがうまいというだけで足を運んでくれる客もある。事実ボクもそうだ。雪山でうまいピザとコーヒーがある。スキーを二の次にしてそれでもいいやと思う中年夫婦くらいは少なくないと思う。ARAIのようなのがひとつ理想に近いが、残念だが、高すぎる(笑)