またしても、藤沢周平

古本屋でかなり手にはいるので、どうしても偏ってしまう。今、今年の大河ドラマの影響があるのか、司馬遼太郎が少し品薄になっている。

秘太刀馬の骨 (文春文庫)

秘太刀馬の骨 (文春文庫)

ついこの間NHKでドラマ化していたものだ。
馬の首の骨を断ったという秘太刀の行方を巡る話だが、例によって、藩内の派閥抗争に巻き込まれながら展開するお馴染みの流れ。少し変わっているのは、秘太刀の継承者がわからず可能性のある矢野道場の高弟をあたって直接立ち会いをしてその感触から探ろうとする。しかし、矢野道場では他流試合を禁じており、藩の紅白戦にも出場しない徹底ぶり。そこで、弱みを握ってそれを盾に立ち会いを迫る。その弱みに、藤沢周平らしい人間味が現れる。
大衆小説には違いないが、おもしろい。おもしろいのは、人の生き方、姿。それがドラマで、最近の感動ばかりの不幸と幸福を行き来するようなドラマに辟易しているボクにはちょうどいい。それは、ワグナーではなく、モンクを愛する心情とよく通底していると思っているが、どうかな。