フライの雑誌72号

昔いっしょに釣りをした少年の原稿が載っていた。もう、大人。
以前のことをふりかえっている。
そうか。そう思っていたのか。てっきりもっと楽しんでいたのかと思っていた。子どもには表現されたものと、そうでないものをうまく峻別できないのだな。
気の毒をしたかも知れぬ。
若気の至り。
しかし、「BS日本釣り紀行」は彼のためではなかった。彼をリクエストするディレクターに対して、ボクはある少年を推し、彼を映像に乗せた。当時、映像でしか彼が川で遊ぶ姿を見ることができなかったある母親のためであった。その切なさ、今は沁み入るほどにわかる。
彼はうまく卒業できたのだろうか。
そこに描かれたかつての職場に、ボクがそれほどに思い入れをもっていないことに気付いた。そうなんだ。結局、人と人との交わりやかかわりが生み出す空気の記憶なのだ。建物はメディアに過ぎない。