かしわ餅

毎年、桃の節句端午の節句にある方からお餅が届く。もう10年以上になる。仕事で少しだけ息子さんたちにかかわっただけなのに、本当にありがたいことだ。いつもはご亭主が配ってくださるのだが、今回は奥さんがきてくださった。
実は、奥さん、10年ほど前に病気をされて声を失った。そういうこともあって、息子さんたちが川で遊ぶ様子を何とか見せて勇気づけてあげたいとNHKの取材を引き受けたことがある。全国に流れている電波をそんな風に使うのはどうかとも思うのだが、ボクができるのはそんなことしかない。果たして、彼のフライに岩魚が食いつき、取材を通して唯一の魚が映った。川には絶対神様がいるんだと心で叫びまくっていたことを思い出す。
そのお母さんだ。声は失われたようだが、立ち姿の元気そうな様子にいろんな思いがいっぺんに流れた。庭先まで見送って立っていたが、もう、何もことばがでない。よかったとも、元気でとも、何とも言いようがない。ただ、彼女の姿をしっかりと見送って、このお餅を味わうのがボクの役割に思えた。
家族で味わった。味以上の深みがある、いい餅である。