神谷玄次郎

おなじみ藤沢周平。富士山麓用に買っておいたのだが、今になって読んでいる。藤沢周平の描く女はどうも艶がある。いや、性描写があるわけではないのに、実に深いエロティシズムを感じるのだ。例えば、こう。

お津世は立ち働いている姿など見ると並みの背丈で、どこか貫禄さえ感じられるほどだが、こうして抱きすくめてみると、意外なほど骨細で小柄な女である。だが、その骨細な身体は、裸になると魅惑的なふくらみを隠していて、お津世を抱きながら、玄次郎は、死んだ亭主は心を残したに違いない、と思うことがある。

これで、ほとんど女のイメージができるものなあ。たった、数行。筆力とはこういうのを言うんだろうな。